高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

カタルーニャ独立問題について

高城未来研究所【Future Report】Vol.329(2017年10月6日発行)より


今週はバルセロナにいます。

今週10月1日、バルセロナを州都とするカタルーニャ州では、スペインからの独立の是非を問う住民投票が行われましたが、スペインの国家治安部隊が投票所の「制圧」に乗り出し、中央政府とカタルーニャ市民との衝突が国際社会に大きく知れ渡ることになりました。

まず、これまでの長い歴史と背景を振り返ってみたいと思います。
18世紀初頭に起きたスペイン継承戦争で、カタルーニャは1714年に自治権を失いましが、その後スペインが第二共和制となった1931年に再び自治権が認められました。
しかし、第二次大戦後のフランコ将軍独裁下ではカタルーニャ語の使用が禁止され、圧政に苦しむ日々が続きました。
1979年フランコ没後、カタルーニャ語の公用語としての地位をやっと回復。
この間、地元の言語であるカタルーニャ語が公に話せたのは、唯一カンプノウスタジアムだけでした。

このような歴史から、サッカーがいまも盛んで、クラシコと呼ばれる「敵国」の首都マドリッドとの試合は、スポーツなのに戦争同然の様相です。
いまもカンプノウで開催される試合前半の17分14秒になると観客の中から「独立コール」が沸きあがるのは、1714年に失った自治権を取り戻す機運の現れとして、サッカーファンならご存知の方も多いと思います。

カタルーニャ州の大きさは九州程度で、人口はおよそ750万人。
2012年の州のGDPは2077億ユーロとデンマーク並みの規模を誇る裕福な州で、フィンランド、アイルランド、ポルトガルのGDPを上回っています。

毎年9月11日はスペイン継承戦争でカタルーニャが自治権を失った日にちなんで「カタルーニャの日」と定められ、大きなイベントが開催されていますが、2014年はちょうど300年の節目の年で、デモ参加者が180万人(バルセロナ警察発表)まで膨れ上がり、独立の機運がより一層高まりました。

「独立問題」を先鋭化させている最大の要因は、国民党政権の中央集権的政策にあります。
独裁者フランコ政権の流れを組む現与党国民党(PP)は、「多元的スペイン」を認めず、より強固な中央集権政治を近年行ってきました。

そして、今週10月1日の投票日当日。
スペイン政府は、数千人の警官隊を送り込み、力づくで投票所を封鎖しました。
なかには、投票に来た市民を警棒で殴るなどの横暴が平然と行われ、1000人近い負傷者が出る大惨事となりました。
この模様は、かつてのフランコ将軍の独裁を想起させる出来事で、「欧州の恥ずべき行為」として、世界に伝えられることになりましたが、実は首都マドリッドでは大きく報道されていません。
マドリッドに住む僕の友人も、BBC等他国の報道やインターネットで事実を知り、国家の暴力行為に驚いています。

さて、肝心の投票の結果は、90%以上の賛成を持って独立となりましたが、スペイン政府は、一貫して「違憲」を主張していることから今後、大きく揉めることが予測されます。

ただし、欧州ではマスメディアが国家を監視する役目がしっかりしています。
今後、あらたな暴力行為は許されません。
カタルーニャは、世界を味方にしながら、きっと独立へと進むでしょう。

スペインは、ついに国家分断の時代を迎えます。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.329 2017年10月6日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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