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昨日、海辺の通りをひとり歩きながら、
自分に立ち現れている世界は、実は自分だけの世界なんだなあとふと思いました。
これは、独我論を唱えている、ということではないのです。
もちろん、他の人と共有できていると感じる経験や、そのように確信するということはあります。
でも、同じ場に家族がいたとしても、僕が僕の確度から僕の感じ方フィルターを通して感じたことと、他の家族が感じたことは、厳密にいえば同じではありえません。
自分が経験したように経験しているのは、自分だけなのです。
ましてや、単独で行動していることも多々あり、また自分だけが感じ、考えていることはいくらでもあります。
生まれてからの長い月日であなたが経験したすべての経験を、あなた以外は誰も経験していないのです。
そういう意味で、自分の人生は、自分だけの宇宙といってもいい。
他人の宇宙と比べることに本質的な意味はないわけです。
そもぞも、それぞれに立ち現れている現象は違うわけですから。
ゆえに、僕らが本質的にすべきことはただ一つで、自分に立ち現れた人生をまっとうすること。
この、まっとうするというのは、成功させるとか、できるだけ長く生きるとか、そういうことではないはずです。
自分の人生をまっとうするというのは、成功とか長いとかそういう相対的なコトじゃなく、うれしいことも哀しいことも自分がやるべきことも想像もしていなかったことも次々と立ち現れてくるけれど、そういう人生を自分なりに生ききるってことなんだと思います。
だから、人間はそういう自分の人生を生きるという範囲では、どこまでも自由。
でも、それは“孤独”ということでもあります。
だから、多くの人は、たとえそれによって失う自由があったとしても、他の人とつながりたいと思う。わかってもらいたいと願う。ひととときの一体感を求める。
一方で、自分の人生を生ききるために、孤独を選ぶこともある。でもやっぱり寂しいから一緒にいようとしたりする。
そうやって生きているんだなあと思ったわけです。
※
そう考えると、自由の反対は不自由じゃなくて、孤独だったのかな。
いや、自由と孤独は表裏なのかもしれない。
世間は「孤独死」というのを悲惨なものとして扱うけれど、それは多くの人が孤独を嫌悪しているからであって、本当はそのひとはそのひとの自由な人生をまっとうしただけかもしれないので、他人が可哀想とか決めつけるようなことじゃないのかもしれないですよね。
ブッダは戦略的にニヒリズムとして、生老病死を人生で避けられない四苦として置いたように、ひとは生まれたときから孤独なんだと思っておいたほうが、むしろ生きやすいってことはあるかもしれません。
本来、自分だけの人生を生きなければならない孤独と、自分だけの人生を生きられる自由。
この自由と孤独の間から、愛とか哀しみとか喜びとか、いろいろな物語が生まれてきているのかもしれませんね。
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西條剛央プロフィール
1974年、宮城県仙台市生まれ。早稲田大学大学院(MBA)客員准教授。日本学術振興会特別研究員(DC/PD)を経て、2009年より早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻専任講師、2014年より現職。専門は組織心理学、哲学、質的研究法。2002年(平成14年)から2007年まで『次世代人間科学研究会』を主催。独自に体系化した構造構成主義は医療や教育、経営など領域横断的に様々なテーマに導入、応用され、200本以上の論文、専門書が公刊されている。京極真、池田清彦とともに『構造構成主義研究』を創刊、編集長を務めた。
ふんばろう東日本支援プロジェクト元代表。2011年、東日本大震災をうけて、独自に体系化した構造構成主義をもとに同プロジェクトを設立、物資支援から重機免許取得といった自立支援まで多数のプロジェクトが、3000人のボランティアにより運営される日本最大級の「総合支援ボランティア組織」に育てあげた。2014年、世界的なデジタルメディアのコンペティションである「Prix Ars Electronica」のコミュニティ部門において、最優秀賞にあたるゴールデン・ニカを日本人として初受賞。同プロジェクトは「ベストチームオブザイヤー2014」も受賞。代表理事を務めるスマートサバイバープロジェクトがGood減災賞受賞。
現在、スマートサバイバープロジェクト(代表理事)、いいチームを作りましょう(共同代表)、日本医療教授システム学会編集委員などを務める。
主な著書としてAmazon総合1位のベストセラーとなった『人を助けるすんごい仕組み』(ダイヤモンド社)、『構造構成主義とは何か』(北大路書房)、『質的研究とは何か』(新曜社)、『研究以前のモンダイ』(医学書院)、『チームの力——構造構成主義による“新”組織論』(筑摩書房)などがある。
2017年1月よりオンラインサロン「エッセンシャル・マネジメント・スクール」主催。
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