※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.033(2018年11月22日)からの抜粋です。
今週はなんと言っても、日産のカルロス・ゴーン会長逮捕の話題が日本中を覆い尽くし、他の情報が頭に入ってこない状況ですね。本当にビックリ。
実はゴーンさん、仕事上で絡んだことは一度もないのですが、彼が社外取締役になっている企業のトップから聞いている人柄や、(たまたま出会った)焼き鳥屋さんでの彼の様子をみる限り、あれだけの資産がありつつも、さらに多くを望もうとするようなガツガツとしたタイプではないように見えていたからです。実際に何が起きていたのかは、まったくわからないのですが、ひとつ言えるのは今回の告発には(たとえ司法取引によるトップの逮捕という大きな目標があったにせよ)、とても不可解な側面が多いということ。
ゴーンさんが実は浪費を愉しむタイプではないという意見が出ている一方で、割とセコい自宅購入や、再婚した奥さまと共に浪費し続けていたという話もあるのですが、このクラスの摘発がその程度の使い込みで行われるとは思いません。
最初に出てきた話というのは、強烈な犯罪というよりは醜聞に近いもので、愚かな人間の欲望が不適切な金の使い方に繋がったという話で、ゴーンさんの経歴や日産での立場を考えるならば、あくまで日産内部で処理できたレベルではないかと思います。それが逮捕にまで及んでいるのには、何かしらの思惑があるのだろうと誰もが想像してしまうのではないでしょうか。
ということで、ちょっとイレギュラーな形ですが、今回は日産ゴーン会長の不正を巡る不可解な謎を(解決はできませんが)いくつかのパターンでふり返りながら、何が起きているのか状況把握に挑戦してみたいと思います。
逮捕にまつわる疑問の背景
今回の事件で不可解な点は極めて多いのですが、そもそも“不可解と感じる”ためには、いくつかの背景情報が必要でしょう。まずは、ゴーンさんのキャリアを簡単に整理しておきます。
ブラジル出身のゴーンさんは、もともとフランスのタイヤメーカー・ミシュランの幹部で、最終的には北米市場におけるCEOとなりました。ミシュランの北米での業績は散々なものでしたが、彼がCEOになると劇的なまでに利益を積み重ねていきます。その実績から、フランスの自動車会社・ルノーに幹部として迎えられ、上席副社長として腕を振るい始めます。
彼が得意なことは、利益構造を見直して、その企業が生み出している価値を最大限に引き出すことでした。伝統的に大きな付加価値を抱えつつも、構造的な問題で最終的にその価値を利益として残せない、旧い体質の企業から利益を生み出すことが得意でした。
“コストカッター”、“コストキラー”という異名をルノーで取った彼は、1999年3月27日にルノーが日産の株式の36.8%を取得した際、日産の取締役に就任。そして1年後にはCEOへと選出されました。
それから17年、彼はCEO(途中からは社長も兼任)として日産自動車の再構築を主導します。V字回復という言葉は、ゴーンさんが日産を立て直した際に作られた言葉でした。現在(2017年3月期)は売上高で11兆8000億円、営業利益で6850億円。彼は日本という国が再浮上していくために必要なマスターピースのようであったと思います。
ところが、話はそんなに単純ではありません。ゴーンさんはルノーのCEOも兼任していますが、ルノーという会社は“普通の会社”ではないからです。
(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)
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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。
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