※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.041「"クラウド"に集まるコンテンツ。変わる利用者の価値観」(2019年3月22日)からの抜粋です。
米国発祥のSNSサービスの草分け「MySpace」が、サーバーのデータ移行に失敗し、2003年のサービス開始から2015年までにアップロードされた楽曲データが“すべて”失われたと発表したそうです。
MySpaceは音楽をコンパクトに圧縮する技術MP3が普及したことで起きた、音楽データ交換(その中には違法な楽曲の交換もありますが)の活発化とともに広がったSNSです。当初は10代の音楽マニアが中心に、好きな音楽や自分たちの演奏、思いついたリフなどをアップロードしていましたが、徐々に参加する年齢層が広がり、当時、一気にユーザーを拡大していきました。
2008年5月には2億320万人が登録するSNSとなり、Facebookが登場するまでは最大のSNSでもありました。その特徴は“音楽を作る”人たちと“音楽が大好き”な人たちで構成される、クリエイティブな空気感です。
“音楽を創り出す”という、狭い範囲のカルチャーではありますが、その存在感はFacebookなど特定のジャンルに特化していないジェネラルなSNSが主流になったあとでも大きかったと思います(もっとも日本ではほとんど流行らなかったのですが)。
失われたのは写真、ビデオ、オーディオなど、アップロードされたすべてのファイル。MySpaceには著名なプロのアーティストも登録し、創作活動の中で作品やアイディアを披露していましたが、それらすべてが失われたとのこと。
ゴリラズやオアシス、亡くなったエイミー・ワインハウスなども使っていたMySpaceには、制作途中の音源なども多くありましたが、本人がそれらを整理してアップロード(はしていないでしょう)していないかぎり、ほとんどが失われることになるはずです。その数は1400万組のグループがアップロードした5000万以上もの曲だというのですから、なかなか凄い数字ですね。
SNSはいわばクラウドの中に構築された仮想世界です。しかし、それはあくまでもデータとコンピュータープログラムによって構成されていて、信頼性があるように思えて、またバーチャル世界を生み出しているように見えながら、ちょっとしたミスですべてが失われる可能性がある。もちろん、システムはさまざまな方法で保護されていますが、あらゆるシステムは完璧ではなく、ひとの操作手順次第で問題が顕在化することを示しているのだと思います。
(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)
本田雅一メールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」
2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。
ご購読はこちら。
その他の記事
クラウドの「容量無制限」はなぜ破綻するのか(西田宗千佳) | |
「デトックス元年」第二ステージに突入です!(高城剛) | |
意外に簡単に見られる新4K放送。だが課題も…(小寺信良) | |
上野千鶴子問題と、いまを生きる我らの時代に(やまもといちろう) | |
数値化できる寒さと数値化することができない寒さ(高城剛) | |
平昌オリンピック後に急速に進展する北朝鮮情勢の読み解き方(やまもといちろう) | |
誰も無関係ではいられない「メディアの倫理」(小寺信良) | |
オワコン化が進む、メタバース、NFT、Web3、AIスピーカー… 真打は生成AIか(やまもといちろう) | |
リアルな経済効果を生んだ「けものフレンズ」、そして動物園のジレンマは続く(川端裕人) | |
週刊金融日記 第280号 <Instagramで女子と自然とつながる方法 〜旅行編、米朝核戦争に備えビットコインを保有するべきか他>(藤沢数希) | |
所得が高い人ほど子どもを持ち、子どもを持てない男性が4割に迫る世界で(やまもといちろう) | |
なぜ作家に「酒好き」が多いのか(ロバート・ハリス) | |
コロナワクチン関連報道に見る、日本のテレビマスコミの罪深さ(やまもといちろう) | |
雨模様が続く札幌で地下街の付加価値について考える(高城剛) | |
「狭霧の彼方に」特別編 その2(甲野善紀) |