※高城未来研究所【Future Report】Vol.413(2019年5月17日発行)より
今週は、フランスのシャモニーにいます。
この街は、人口1万人に満たないほどの小さな街ですが、年間150万人以上の観光客が訪れる、欧州を代表する観光地として知られています。
人々が目指すは、フランスとイタリアの国境に位置するヨーロッパ・アルプスの最高峰。
標高4810.9mの山、モンブランです。
フランス語でモン (Mont) は「山」、ブラン (Blanc)は「白」を意味し、車で数十分のイタリア側では、同じ「白い山」を意味するモンテ・ビアンコ (Monte Bianco)と呼ばれているこのモンブランこそ、実は登山の発祥地です。
1786年8月8日にモンブランが初登頂されてから、現在の登山というスポーツが始まったとされているため、登山家の聖地とも呼ばれており、また、1924年に開催された冬季オリンピックの記念すべき第1回大会が、ここシャモニーオリンピックで開催されたことにより、「冬季五輪・発祥の地」でもある、歴史あるウィンター・リゾートなのです。
驚くのは、値段がシーズンによって大きく異なり、最大五倍差もあることです。
ホテルや航空券が、シーズンによって価格が異なるのは知られるところですが、レストランやお土産物、さらには駐車料金まで、シーズンによってまったく異なっているのは、驚きました。
現在は、冬のシーズン(つまり、稼ぎ時)を終え、のんびりしたシャモニーですが、それでもエギーユ・デュ・ミディに登れば氷点下で、多くのスキー客で、まだまだ賑わいます。
先週、ブラジル・アマゾンで日々35度で蒸し暑い日々を送っていた直後に、今週、いきなり氷点下での撮影が続き、ついにカメラが不調。
おそらく、自分の身体もカメラ同様不調をきたしているのでしょうが、いまだ自覚症状がない上に、明日から再び南半球のシドニーに向かわねばなりません。
どこかでカメラ同様、自分のメンテナンスをすべきだ、と不調のカメラが教えているように感じています。
季節の変わり目に体調を崩す方も多いと思いますが、これだけ無茶な移動を繰り返し耐えられるのは、近年貯めに貯めた医療知識所以だと自負するところです。
さて、モンブランといえば、ケーキ!
日本では、イタリア発祥やパリの老舗の考案などと言われていますが、シャモニーの街中で尋ねると、「日本からの逆輸入」だと人々は言います。
なかなか面白いですね。
話を聞けば、確かに原型に近いものは、イタリアやフランスにあったようですが、それを洗練させて昇華し、まったく別のものに仕上げる術は、かつての日本のお家芸。
どうやらこれが、遥々フランスに逆輸入されたようです。
自動車もテレビも、そうやって近代日本は産業を育成し、世界へ進出していました。
当時、日本はコピー大国と揶揄されていましたが、気がつくとサンプリングという世界の文化潮流の先頭に位置するようになり、その後、現状に甘んじて、サンプリングも昇華もしなくなって引きこもり、成長が著しく鈍化して、かつてのお家芸は、近隣諸国のものとなりました。
モンブランの麓でモンブラン・ケーキを見ると、かつて輸出大国だった日本の面影を見ます。
日本で令和がはじまった今月、僕はフランスのケーキをみながら、昭和を感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.413 2019年5月17日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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