※高城未来研究所【Future Report】Vol.653(12月22日)より
今週は、東京、高崎、小田原と移動しています。
1956年に策定された「首都圏整備法」によれば、東京都およびその周辺地域である茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・神奈川県・山梨県の1都7県は「首都圏」であり、東京駅から高崎駅まで新幹線で最速50分弱、小田原まで35分で着くことを考えれば、両都市とも通勤圏で、事実、高崎からの朝7時台上り新幹線は7本もあります。
現在、首都圏人口はおよそ4500万人まで増え、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県を指す「東京都市圏」でも3800万人を有する世界最大の都市圏人口を誇ります。
この数は、ニューヨーク、上海、デリー都市圏人口のおよそ二倍もあり、世界最大のメガシティといえば聞こえはいいですが、実際は先進都市とは思えない狭い土地に驚くほどの人間がひしめき合って暮らしている現状があります。
巨大化する首都圏人口を分散するため、1950年代には「都心」に集中していた首都機能を「渋谷」「新宿」「池袋」の3地区を「副都心」として位置づけましたが、それでも分散は追いつかず、東京都の隣県に「新都心」を設置。
「さいたま新都心」「幕張新都心」「横浜みなとみらい21」などが生まれました。
一方、世界経済都市ランキングでみると、森ビル系シンクタンクの調査でも東京は10位まで後退していますが、直近の「エコノミスト」誌による1人あたりGDPの名目値、物価での補正値、物価と労働時間での補正値から鑑みると、もはや日本はランクに入らず、東京の実体経済も他ではありません(https://www.economist.com/graphic-detail/2023/12/15/the-worlds-richest-countries-in-2023)。
ワーク・ライフ・バランスがわかる物価と労働時間での補正値を見れば、いまやポーランドやエストニア、リトアニアより下に位置し、狭い場所にスシ詰めになって長時間労働しても稼げない実態が浮かびあがります。
こうした世界最大の都市形成の裏側にある問題は、日本特有の中央集権化に他なりません。
一般的に中央集権とは、政治の権限が1か所に集中している体制を指しますが、その実、税金を含むすべての利権を一旦中央に集め(吸い上げ)、再分配する古きシステムそのものです。
この税金を取り合うのが代議士であり、「現代の打ち出の小槌」とも呼ばれる国会で審議する必要のない予備費は、本来3%だったのに10%近くまで膨らんでいます。
また、中央集権システムではピラミッド型の階級構造が形成されることが多く、上層が財源や決定権を持ち、下層になるほど機能が細分化されたり、財源や決定権が小さく制限され、上下方向の統制がより強化される傾向が顕著にあります。
上意下達と情報収集の機関として本来必要ない中間組織も多数形成され、そのための出先機関が多く設置されるのも特徴で、「見えない身分」が出来上がります。
この中央に集められた資金を再分配する力が、儒教的社会背景を持った「日本式システム」を堅牢にしているのです。
日本で「政府」といえば、事実上「東京の霞ヶ関や永田町」を示す言葉になっており、地方の県庁や市庁を指しません。
まさに「お上」。
東京を跨ぎ、高崎から上って小田原へ新幹線で移動すれば1時間半。
かつて中央集権そのものだった国鉄を分割し、旧国鉄の「職員局」がJR東海の利権を手中に収める一方、旧国鉄「経営計画室」がJR東日本の利権を得て、その争いは今日まで続きます。
かくありまして、JR東海が推し進めるリニア中央新幹線の東京側発着駅は、地下空間に余裕がないなどの難癖をつけて、JR東日本の拠点である東京駅ではなく、品川駅に決まった経緯があります。
今週、高崎から小田原への移動は、東京駅でJR東日本とJR東海を難なく乗り継げますが、今後、東北・上越・北陸新幹線からリニア中央新幹線へ乗りつごうとすると、重い荷物を持ったまま、山手線や京浜東北線を使わねばなりません。
品川駅近辺は、首都圏を一気に広げる門戸となるのか、それとも利権を分ける「見えない関所」同然となるのでしょうか?
たぶん、古いシステムを変えられずに後者になるのだろうな、と感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.653 12月22日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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