2012年4月某日、夜間飛行事務所で編集作業に勤しむイノウエに届いた1本のメールからすべては始まった。
(第1回はこちらから)
「すごいもの」の「すごさ」を伝える仕事
イ 動画観ました。
T どうです?
イ すごいです。アッサリしてるようですけど、かなりとんでもない映像ですよね。オールコートのラリーをあれだけスムースに、力まずに自然体でやってるのってあまり見たことがないです。
T でしょ? さらにすごいのは、こういうプレーが誰でもできるように、ちゃんと理論化されてるっていうことなんです。
イ 理論の中身はまだわからないですが、卓球経験者として、こんなプレーができたらいいなというのは素直に思いますね。どういう理論なんですか?
T ARP(アープ)理論といって、山中教子先生という元日本代表の名選手が、自身の経験や、トレーニング、武術などさまざまな分野からの知見を参考に作り上げたものなんです。山中先生の戦績はメールでお送りしたとおりです。
Tからのメールには、
・1963 年第27 回世界選手権団体優勝(プラハ大会)
・1964・66 年 全日本選手権シングルス優勝
・1967 年 第29 回世界選手権団体優勝・混合ダブルス優勝(ストックホルム大会)。
とある。
卓球経験者でも、若い世代ではもう知る人も少なくなっているかもしれない。日本卓球界にはかつて、男女ともに毎年のように世界チャンピオンを輩出する、「卓球王国」といわれた時代があった。山中教子はその卓球日本全盛期にあって、もっとも美しく、もっとも華麗なプレーで知られた名選手だ。
イ 山中先生はまだ直接指導されてるんですか。
T 普通の若い人よりもずっと元気ですね(笑)。例えばこの動画とか見てください。アープ理論は山中先生がつくったものですが、山中先生自身の卓球も、アープ理論のおかげで現役を引退したあといまに至るまで成長し続けてるんだそうです。
アープ理論のキーワードは「上達」だとイノウエは考えた。実際、アープ理論による指導を受けに足を運ぶ人は、年齢もレベルもさまざまである。下は小学生から中高生、大学生、社会人、マスターズまで。趣味で汗を流す人から、トップ選手まで。中には日本代表クラスの選手も山中氏に教えを乞いにくることがある。そして、そのすべての指導やトレーニングは同じアープ理論で行われる。
誰もが上達できる卓球理論。そしてこのインパクト十分の映像。
これはチャレンジだ。イノウエはそう思った。ビジネスとして卓球を取り上げるのも、コンテンツとして映像を取り上げるのも初めてだったが、この目の前にある「すごいもの」を、一人でも多くの人に伝えるという点では、夜間飛行の“編集力”は力を発揮できる。そう考えた。
イ Tさん、ぜひやらせてください。どういう形になるかはまだわからないですが、夜間飛行で卓球のDVD、挑戦したいです。
(第3回につづく)
(第1回はこちらから)
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