津田マガが成功したのは「オープン」と「クローズ」をつなげたから
井之上:津田さんは、『メディアの現場』の読者を増やすために、「ソーシャルリーディング」の演出のほかにも、さまざまな工夫をしていると思いますが、その中でも「ここが肝だ」というのはどこですか?
津田:ちょっとメルマガの歴史をおさらいしておくと、最初に「有料メルマガ」を開拓したのは日垣隆さんなんです。日垣さんが、自分で開拓したノウハウを堀江さんに伝授した。堀江さんのメルマガが月800円(税込840円)なのも、「年間1万円くらいがいいんだよ」という日垣さんのアドバイスを受けたからだそうです。堀江さんは、その日垣メソッドにツイッターを連動させ、さらに「Q&A」というキラーコンテンツを搭載することで、一気に購読者を増やすことに成功しました。
僕がメルマガをはじめたのは2011年の9月ですから、堀江さんたちに比べて後発組なんですね。僕の中では、メルマガ界はすでに「ブルーオーシャン」ではないという認識でした。他のメルマガと競争をして勝ち抜かなければいけない状況だなと。それでメルマガを発行するにあたって、2点工夫したんですね。
まず一つは価格です。800円が相場の中で、600円にした。他のメルマガと比べて安くすることで、複数のメルマガを購読している人が「切りにくくなる」と思ったんです。またこれは個人的な感覚ですが、一号あたり200円は高いなと(笑)。一号あたり150円であれば、ペットボトルと同じ価格になって、「ペットボトル分くらいの価値はあるよ」と僕としても強く勧められるなと思ったんです。
あともう一つが、これは「オープンorクローズ論争」にも関わってくるのですが、『メディアの現場』をメルマガ界の中でもっとも「オープン」なものにしようと考えたんです。「言論はできるだけオープンな場で行なわれるべきだ」という点に関しては、naoyaさんも僕も近い考えをもっています。ただ、naoyaさんと僕で違うのは、僕はメルマガというメディアでも工夫次第でオープンな議論ができる、と考えているところです。具体的には、取材記事のような公共性の高いものは、基本的には無料で出していくようにしました。そうすることで、一人でも多くの人に読んでもらって、どんどん議論の材料に使ってもらえばいいと思ったんですね。
一方で、「日記」や「Q&A」のような、「記事の内容そのもの」というより、「津田大介」という人間に興味が持ってくれた人が読むものについては、クローズにする。そうすることで、オープンでは難しかった、ある種のファンクラブ的側面も作れる。さらに僕の場合は、「メルマガを発行するのは、政治メディアを作るための資金稼ぎのため」と謳いましたので、クラウドファンディングの側面も盛り込むことができた。
ですから、僕のメルマガがそれなりに多くの読者を獲得できたのは、「クローズ」の世界だけの世界で勝負するのでも、「オープン」の世界だけで勝負するのでもなく、「オープン」と「クローズ」の世界をつなげることに成功したからじゃないかと思っています。

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