津田大介
@tsuda

メルマガ『メディアの現場』vol.46「今週のニュースピックアップ」より

政府の原発ゼロ政策はなぜ骨抜きになったのか

日本の最終処分地はどこに?

――結局、原発をゼロにできるかどうか、もんじゅがどうなるかというのは、「使用済み核燃料の処分をどうするんだ?」というところが根底にある問題なんですね。

津田:そうです。再処理の道を選ばないとしたら、どういう解決策を取るか――使用済み核燃料に含まれる放射性物質がなくなる期間にはいろいろな説があって、「10万年」から「100万年」まで、人によって結構、バラつきがあります。

いずれにしてもそんな長期間、人間が地上で管理するなんて、絶対に無理じゃないですか。抜本的な解決を図るなら、地中に埋める「直接処分」しかない。日本以外の国々も、「使用済み核燃料は再処理せず、そのまま埋める」という方向にシフトしています。

ただ、使用済み核燃料を埋めさせてくれる土地なんて、そう簡単には見つかりません。先ほど地元の反対が強いという話はしましたが、それだけじゃなく環境的な要因も重要になるからです。

事故が起きないよう、何十万年も動かない安定した地盤でないといけないし、地下水などを汚染するおそれのある場所はもってのほか。地質学者に言わせれば「10万年後、日本は今の形をしていない。だから日本には何十万年も動かない安定した地盤なんてない」なんて笑い話もある。いや、最終処分を考えると笑えないんですけど……。[*29]

「埋めちゃえ」というのは簡単だけど、じゃあどこに埋めるの? っていう問いがわれわれに突きつけられてる。正直な話、もう日本の核燃料サイクルは「詰んでる」んです。だからこれは、原発をどうするかという話とは別に議論しなきゃいけない。

そして、今は口に出す人は少ないですけど、このまま行くと恐らく最終処分場は、現在立ち入り禁止区域になっている福島第一原発から20km圏内に作るという話にならざるを得ない。原発をゼロにしようが、核燃料サイクルや原発を推進しようが、核のゴミが出ることは不可避です。つまり、どこかのタイミングで最終処分場は作らなきゃいけない。地元の反対で候補地が決められないなら「地元」住民が存在しない福島第一原発の20km圏内に作るという選択肢しかなくなっていくんじゃないかと。

 

――いや、でもそれは今避難している20km圏内の住人にとっては承服しがたい話ですよね。

津田:放射性物質のせいで故郷を奪われ、そのうえそんなリスクを抱えさせられることにとなるとね……。ただ、現実的に大熊町、双葉町、富岡町、楢葉町といった20km圏内の町の空間放射線量は1年半経った今も非常に高い。[*30]

楢葉町の一部など、放射線量が低く立ち入り禁止が解除された地域もありますが、大熊、双葉、富岡の住宅街などではまだ5マイクロシーベルト毎時以上であるところが多いです。5マイクロシーベルト毎時で年間43.8ミリシーベルトなので、数年暮らすと、一般的に健康に影響が出はじめるといわれる100ミリシーベルトを超える。除染にも限界がありますから、少なくともあの地域に住んでる人があと2~3年で戻れるということは現実的には考えにくい。

実際、今避難している人たちの中で、元の居住地に戻りたいのは高齢者が多く、子どもなどがいる若年層は放射線の影響を考慮して、戻ることより新しい場所での生活を求めている人が多いことが避難住民へのアンケートで明らかになっています。[*31]

放射線量が下がらないまま、あと20年も経過すると、帰還の意思を示している高齢者たちが亡くなり、新天地で暮らす人たちが増える。ほとぼりをさまして、帰還の意思をもった住民がいなくなったタイミングで最終処分場を――と考えている政治家や官僚は多いと思います。もちろん、最終処分場を作るには、地盤の問題とかがありますから、そこまでしても作れないといった可能性はあるわけですが……。

根本的な話として、直接処分に最適な候補地なんて日本に限らずなかなか見つからないんですよ。去年このメルマガのvol.16で『100,000年後の安全』[*32]という映画を撮ったマイケル・マドセン監督にインタビューしたことがありました。あの映画は、フィンランドに建設中の使用済み核燃料の最終処分地「オンカロ」をテーマにしたドキュメンタリーです。あそこが唯一、世界で動き出している直接処分の現場なんですよ。

 

――世界で1つしか事例がないんですね。そして、直接処分を行うにしても、すぐに着手できるわけではないと……。日本は使用済み核燃料とどう付き合っていけばよいのでしょう?

津田:これまで見てきたとおり、使用済み核燃料をどうするかは、日本にとって大きな課題です。そこで原子力委員会は科学者で構成される「日本学術会議」という組織に「提言をまとめてほしい」と依頼したんですね。

2010年9月16日、同組織は「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」を発足させ、検討を行ってきました。福島第一原発事故をきっかけに日本の原子力政策が揺らいだこともあり、予定よりも審議は長引いたものの、2012年9月11日にようやく結論がまとまりました。[*33]

彼らの回答によると、使用済み核燃料の処分をめぐり、日本は政策を抜本的に見直す必要がある、と。そして、これまでの政策枠組みが行き詰まりを示している理由の一つは「大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題が先行して扱われてきたことである」とし、国民が納得する原子力政策の大方針を打ち出すべきだとしています。

そして「総量確定」と「暫定保管」という二つの軸で処分を考えるべきだと結論しているんですよ。脱原発を決めたスウェーデンでは、撤退時期を明らかにすることで、これから出る使用済み核燃料の総量が確定し、最終処分地について話せるようになった、と。ただ、最終処分地を決めるには、当然長い時間がかかります。ですから、それが決まるまでは、地上のどこかで暫定保管するモラトリアム期間が必要になる。

そして、暫定保管場所や最終処分地の決定に際しては、住民との合意形成――「コミュニケーション」が重要であるとしています。今まで原発のような電力開発では、「電源三法」と呼ばれる法律に基づき、地域に交付金をばらまいてきました。今までのやり方は、ふさわしくない、と。これはもっともな意見ですよね。

今この時期にこういうまともな提言が出てきたのは非常に注目すべきことだと思うんですが、あまりこの提言はマスメディアではウケが良くなかったようで「国の会議も核廃棄物処分はお手上げ」「問題の解決を先送りする内容」という単純な報道が多かったみたいですね。こういう膨大な報告書を即座に読み解き、マスメディアよりも深い考察を加えるメディアを作らないと、いつまで経ってもわれわれはスウェーデンのように先に進むことができない気がします。

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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