やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

人としての折り返し地点を見据えて

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今年ももうすぐ半分が終わろうとしておりますが、如何お過ごしでしょうか。

私も1月で42歳になり、84歳まで生きると仮定すれば人生の折り返し地点をすでに回った計算になります。もっとも、蓋を開けてみれば自分の人生においてはもう晩年なのかもしれないし、実は150歳ぐらいまで生きるのかもしれない。

ただ、最近自分の人生のたな卸しをしていてつくづく思うのは2つあって、私自身まだ40代という人生の「初心者」であり、いまの時代の40男がどう生きるのかのお手本も特になくただただ自分と向き合って生きていかなければいけないのだと改めて感じるのがひとつ。もうひとつが、与えられた条件の中で何が可能なのか考え抜くことは重労働なのだなあということであります。

前者は、誰もが感じるであろう体力、能力の衰えを自覚しながら、それを埋められるような生き方をしていかなければ、必ず若い人たちの後塵を拝さざるを得なくなるという悟りのような境地をどうサバイバルするのかということ。おそらく、年配の方は皆さんそういう経験を経ていまがあるわけでしょうし、それはあくまでも順番の問題です。ただ、それだと分かって受け入れることと、いつの間にかそうなってしまって慌てふためくこととの違いは大きいでしょうし、いわゆる「老い」と向き合うことは文字通り「未来が閉じていく自分」との遭遇であります。もしも私が遠くにいる第三者だったら、鏡の向こうにいる自分の姿や精神を見て心を通わせる人間に見えるだろうかと思い悩んでしまうわけです。

そして、そういう小さくなっていくであろう自分ができることは、以前のように思い立ったすべてのことを上から順番にやっていけばこなせるようなものではありません。どうしても、いま成すべき仕事を整理し、考え、優先順位をつけて効率的にこなしていかなければ先がない。分かっているけれど、サボりたくなる自分がいたとして、そのサボって遅れた分を徹夜してでも取り返してくれる体力のある自分はもういません。

そんな諸条件を考えていくうちに、ああこれが人生なのだなと改めて感じるのであります、これは順番なのであると。生まれ、育ち、学び、働いた結果として、生み、育み、学ばせ、働ける人間に仕上げる子供を儲けることが、社会を継続し種を存続させるための生命の根幹なのであると。そう考えざるを得ないのです、自分が衰えていくわけですから。

衰えない自分は空想の中でしかない以上、次の世代に託すことの尊さも課題も自分を映す鏡の中に回答はあります。老いていくからこそ取り組まなければならないことがあるのだ、ということに気づいて初めて、この世の中が、またそのわずかでちっぽけな一部である自分が本来果たすべき役割とは何であるかがおぼろげながら見えてくるのでありましょう。たとえ子供を儲けることのできなかった個人であったとしても、そういう人だからこそ取り組むべき仕事があり、使命があるのかもしれない。あるいは、若くして病に倒れ、または思い通りの人生を歩むことができなかったとしても、そういう人たちにとっての真の救いもまた、自身を映す鏡の向こうに手がかりがあるのだということが良く分かります。

日々を生き抜き、暮らしていくための哲学というのは、自分の外、すなわち環境と、己の精神との絶え間ない対話によってしか得られないものなのだ、ということを改めて感じた次第です。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路

Vol.131<今年も半分が終わり、やがて福島にまた暑い夏が来るの巻>

2015年6月25日発行号
目次
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【0. 序文】人としての折り返し地点を見据えて
【1. インシデント1】福島の「ふくしまチャレンジはじめっぺ」に参画しているんだが
【2. インシデント2】Googleが色々と新しいテクノロジーを発表したので簡単にまとめてみました
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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