茂木健一郎
@kenichiromogi

茂木健一郎の「赤毛のアン」で英語づけ(3)

『「赤毛のアン」で英語づけ』(3) 〝大事なこと〟にはこだわっていい

 

いかがでしょう?

 

マリラに「本当の名前は何なの?」と問い詰められたアンは、仕方がなく、「アン」(Anne)という自分の名前を言います。そして、「もし、私をアンと呼ぶのならば、スペルにEがついたアンと呼んでください」と頼む。ここに、アンのこだわりが見えます。
英語のアンの表記には、「Anne」と「Ann」の二つがあることを背景にした会話ですが、『赤毛のアン』の中でも最も有名な場面の一つで、演劇やミュージカル、映画になるときには必ず引用される部分です。

ここに出ている単語には、それほど難しいものはありません。中学生でも、理解できるでしょう。ところが、このやりとりは、間違いなく英語のものになっている。リズム、テンポ、その背景にあるマインドセットが、英語固有のものです。

英語を学ぶとは、必ずしも難しい単語や表現を必要とすることではありません。むしろ、それは一つの感覚であり、さらに言うならば一つの態度(attitude)なのです。こんなにシンプルな表現でも、英語の神髄に触れられることは、知っておくべきかもしれません。
マリラの表現の中で、「fiddlesticks!」というのが面白いですね。これは、とるに足らないもの(any meaningless or inconsequential thing; trifle)を表す口語表現。もちろん、fiddlestickはもともとバイオリンの「弓」のことですが、このような表現にも使われます。

 

この名文!

 

But if you call me Anne please call me Anne spelled with an E."
でも、もしアンと呼ぶのなら、「E」のついているほうのアンと呼んでください。

 

 

1 2
茂木健一郎
脳科学者。1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』、『生きて死ぬ私』など著書多数。

その他の記事

夕陽的とは何か?(前編)(岩崎夏海)
東京オリンピックを痛快に破壊 ――アナウンサー吉田尚記は なぜ”テロ計画” を考える?(宇野常寛)
南国の夜空を見上げながら読むアーサー・C・クラーク(高城剛)
3.11、iPS誤報問題で変わる、科学とのかかわり方(津田大介)
オーバーツーリズム問題の解決を阻む利権争い(高城剛)
パラリンピック「中止」の現実味と、五輪中止運動のこぶしの下ろし先(やまもといちろう)
様々な意味で死に直面する「死海」の今(高城剛)
21世紀型狩猟採集民というあたらしい都会の生き方(高城剛)
過去に区切りをつけ次のチャンスとピンチに備える(高城剛)
仮想通貨に関する概ねの方針が出揃いそう… だけど、これでいいんだろうか問題(やまもといちろう)
「なし崩し」移民増加に日本社会は如何に対応するか(やまもといちろう)
「ローリング・リリース」の苦悩(西田宗千佳)
「消防団員がうどん食べてたらクレームが来て謝罪」から見る事なかれ倫理観問題(やまもといちろう)
高城剛さん、ビットコインなどの仮想通貨についてどう思いますか?(高城剛)
東大生でもわかる「整形が一般的にならない理由」(岩崎夏海)
茂木健一郎のメールマガジン
「樹下の微睡み」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定) 「英語塾」を原則毎日発行

ページのトップへ