辻元:フランスのミッテラン元大統領の言葉に、「社会民主主義、それは崇高な理念をめざす哲学の政治であると同時に、現実ときり結ぶリアルポリティクスの覇者でなければならない」というものがあるんですが、まさにその通りだと思っています。つまり、理想だけ言っていてもダメなんだと。理念と、運営と、オリジナリティ。この3つのバランスをとっていかないと、どんな活動も長続きしないんです。ところが、日本の市民運動やリベラルと呼ばれる人たちの活動は、理念やイデオロギーに終始してしまうことが多いんですね。
山本:そこが残念なのです。
辻元:「理念はわかった。じゃあ、現実的にあなたたちは何をするの?」とだから私は、リベラルを再構築するとしたら、ひとつは「実践・行動」が重要なんじゃないかなと私は思うんです。
実は1998年に制定されたNPO法(特定非営利活動促進法)も、そういうスタンスから立案したものなんです。NPOの活動というのは、とにかく実践なんですよ。街づくりも、障害者支援や子育て支援、介護支援……。日常生活を送るにあたって困ったことがあれば、ありとあらゆることで、その支援を実践していく。その中で、社会全体を変えていこうという考え方がベースにある。でもね、これは「漢方薬型」施策なんですよ。
山本:じわじわと、少しずつ底上げしていく感じでしょうか。
辻元:今すぐ効果は見えないんだけれども、10年、20年経ったときに、日本社会の体質が改善されている類のものです。NPO法ができて、現在NPOは約5万団体になりました。1兆5千億円規模、44万人の雇用を生み出しています。そして政府、自衛隊やNPOが協力して被災地の人たちを救う、昔では考えられなかったことが、当たり前のことになってきたんですよ。
山本:一方で、アベノミクスは「劇薬型」施策です。実際、国民が「わかりやすく、すぐ効く」政策を求めているのは間違いありません。安倍政権はそこを良くわかっていて、日銀の緩和をはじめとして、経済政策も即効性のあるものをベースにしています。そして、回りまわってそれが全体の経済をよくするに違いないという、ある種の期待感を持たせるような幻想も込みで、うまく説明しています。
辻元:成長戦略って、だいたいそういう話ですよね。それで本当に全体が改善したという結果は見当たらなかったりする。
山本:私は、正直に申し上げて、辻元さんとは政策についての意見は対立する部分も多いんですけど、辻元さんのような実務が分かっている政治家がリベラル側にいることは、とても重要なことだと思っているんです。
辻元さんがそういう人たちの中心にいて、増大するNPOや市民活動の守護神となって代弁するべきなのに、 むしろ、辻元さんが右派の攻撃対象どころか、袋叩きにされるための仮想敵にさせられている感じです。
辻元:仮想敵ですか。外からみたら、そんな状態なんですね。辛いな……。
山本:本当にそう見られてるのに気がついてなかったんですか?
辻元:自分のデマ消しよりも、大変な問題抱えてる人を助けるのが優先で。
山本:だからリベラルが弱いんすよ。(笑)
(第二回以降に続く)
※この対談の続きはやまもといちろうメールマガジン「人間迷路」をご購読ください!
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」ことやまもといちろう氏による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!
「人間迷路」のご購読はこちらから
山本一郎主催の経営情報グループ「漆黒と灯火」
第1期メンバー50人限定で募集中!
https://yakan-hiko.com/meeting/yamamoto.html


その他の記事
![]() |
コタツ記事問題(やまもといちろう) |
![]() |
アーユルヴェーダについて(高城剛) |
![]() |
『デジタル時代における表現の自由と知的財産』開催にあたり(やまもといちろう) |
![]() |
目のパーソナルトレーナーが脚光を浴びる日(高城剛) |
![]() |
回転寿司が暗示する日本版「インダストリー4.0」の行方(高城剛) |
![]() |
フェイクと本物の自然を足早に行き来する(高城剛) |
![]() |
目的意識だけでは、人生の中で本当の幸せをつかむことはできない(名越康文) |
![]() |
いつか著作権を廃止にしないといけない日がくる(紀里谷和明) |
![]() |
「GOEMON」クランクインに至るまでの話(紀里谷和明) |
![]() |
気候が不動産価格に反映される理由(高城剛) |
![]() |
夏休みの工作、いよいよ完結(小寺信良) |
![]() |
生まれてはじめて「ジャックポット」が出た(西田宗千佳) |
![]() |
創業メンバーをボードから失った組織の力学(本田雅一) |
![]() |
バンクーバーの街中で出会う「みっつの団体」(高城剛) |
![]() |
リピーターが愛してやまない世界屈指の炭酸泉(高城剛) |