マイヤ・プリセツカヤとの出会い
「スポーツの美」の世界を追求したいと思うようになったきっかけは、卓球を始めてしばらくして出会った、当時の世界チャンピオン・ルーマニア代表・ロゼアヌ選手の卓球です。ロゼアヌ選手の美しく品格のあるパフォーマンスをみて、私は本当に感動しました。こんな素敵な卓球ができるんだ、私もやってみたいと思ったんですね。
※アンジェリカ・ロゼアヌ
1921-2006。1950~1955年にかけて、ルーマニア代表として世界卓球選手権女子シングルスを6連覇した伝説的名選手。
[caption id="attachment_2398" align="alignnone" width="493"] 強さと美しさを兼ね備えたロゼアヌ選手
写真は( http://www.usctta.org/ )より[/caption]
でも、一方では試合があり、目の前の相手に勝たなくてはいけない。もちろん、「速く、強く、美しい」パフォーマンスを追求することは、究極的には勝つことにもつながるのですが、いま、目の前の相手に勝たなくてはいけないということになると、勝つということから逃げられない。
早さと強さと美しさを求める卓球の身体運動と、試合に勝つこと。その葛藤のなかで卓球に取り組んでいた私に素晴らしい出会いがありました。それは、クラッシックバレエのマイヤ・プリセツカヤさんのパフォーマンスでした。マイヤ・プリセツカヤさんのバレエを目にして、人間がこれほど美しく、豊かに運動で表現できるのかと本当に驚き、感動しました。
※マイヤ・プリセツカヤ
マイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤ(1925~)。ロシアのバレエダンサー。しばしば現代最高のバレリーナと呼ばれ、世界中のバレリーナは、プリセツカヤ以後、技術の完成度でも演技力でも、より高度なものを要求されることになったといわれる。
[caption id="attachment_2400" align="alignnone" width="300"] マリヤ・プリセツカヤの白鳥の湖。そのパフォーマンスは山中教子氏の“卓球”の理想でもあった
RIA Novosti archive, image #855342, http://visualrian.ru/ru/site/gallery/#855342[/caption]
マイヤ・プリセツカヤさんが表現している世界を、自分が取り組んでいる卓球でも表現してみたい。ただ、そうは思ってみたものの、当時の自分の身体運動のレベルをマイヤ・プリセツカヤさんのバレエと比較すると、大げさではなく「私は幼稚園児ぐらいだな」と思ったんです。それくらい、とんでもない差がありました。
もちろん、卓球には試合、勝ち負けということがありますから、その面でみれば、当時の私の卓球は幼稚園児ではなく、もうちょっと力があったと思います(笑)。ただ、純粋な身体運動表現として見たとき、そのレベル、スケールには、ものすごく大きな差がありました。
そう思ったとき、正直なところがっくりしました。今まで何をやってきたのかと……。
マイヤ・プリセツカヤさんのように表現したい、でも今からやっても無理だろう……。本当に悩みましたが、最終的には、「せっかく自分は卓球というスポーツでここまでやってきたのだから、やれるとこまで自分なりに理想を追い求めてみよう」と決心した。
不思議なことにそれ以後、やることなすことがすべてレベルアップして、私は急成長することができました。その結果、世界でも成績を残すことができた。いま振り返るとそれは、卓球の中にスポーツとしての美を求めることを貫いた結果だと思っています。
そして、アープ理論というのは、そのとき私が、マリヤ・プリセツカヤさんのバレエのイメージのもと「速く、強く、美しい卓球をしよう」と決心したことが出発点になっているんです。
その他の記事
![]() |
快適な心地よい春を過ごすための用心(高城剛) |
![]() |
人間は「道具を使う霊長類」(甲野善紀) |
![]() |
「英語フィーリング」を鍛えよう! 教養の体幹を鍛える英語トレーニング(茂木健一郎) |
![]() |
連合前会長神津里季生さんとの対談を終え参院選を目前に控えて(やまもといちろう) |
![]() |
見た目はあたらしいがアイデアは古いままの巨大開発の行く末(高城剛) |
![]() |
あれ、夏風邪かも? と思ったら読む話(若林理砂) |
![]() |
PTAがベルマーク回収を辞められないわけ(小寺信良) |
![]() |
ファッショントレンドの雄「コレット」が終わる理由(高城剛) |
![]() |
福島第一原発観光地化計画とはなにか――東浩紀に聞く「フクシマ」のいまとこれから(津田大介) |
![]() |
ぼくがキガシラペンギンに出会った場所(川端裕人) |
![]() |
なくさないとわからないことがある(天野ひろゆき) |
![]() |
空想特撮ピンク映画『ピンク・ゾーン2 淫乱と円盤』 南梨央奈×佐倉絆×瀬戸すみれ×国沢実(監督)座談会(切通理作) |
![]() |
衆院選2017 公示前情勢がすでにカオス(やまもといちろう) |
![]() |
「すぐやる自分」になるために必要なこと(名越康文) |
![]() |
YouTubeを始めて分かったチャンネル運営の5つのポイント(岩崎夏海) |