城繁幸
@joshigeyuki

期間限定公開! 新刊『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』

【第3話】見よ、あれがユニオンズの星だ!

「どや!? わいがおったら、なんも怖いもんないでえ! なんならもいっぺん、二冠 王とったろうやないか!」

豪快に笑う中森をみて、平野の顔にも笑みが戻った。

「大丈夫、彼はまだまだ輝いてるよ。見たまえ、目先の小金に目がくらむことなく、 チームのために貢献する姿勢を。あれこそ我が連合ユニオンズの星なのだ」

ドラフト1位? 松坂2世? そんなスターに用は無い。滅私奉公のために集まる男達がいる。滅私奉公でしかつかめない夢がある。みんなで目指そうユニオンズの星を。

 

 

【教訓】いざとなったら会社と戦う 準備をしておく

 

日本企業の賃金は、年功序列制度という特殊な仕組みで決められています。 最初は初任給という最低水準からスタートするけれども、中高年になるとど んどん出世、昇給して、 歳まできっちり雇用が保証されるというものです。 だいたい40歳くらいまでは働きぶりに見合わない金額で、それ以降は働き以 上に処遇されると考えてください。

「10年は泥のように働け」という言葉は、 この年功序列制度の本質を見事に表していると言っていいでしょう。

ただし、それが実際に機能していたのは、90年代までの話です。たとえば、40代大卒男性で課長以上に昇格できているのは50%に過ぎず、半数の人間は 生涯をヒラ社員で終える時代が既に到来してます(H24賃金構造調査より)。

彼らはきっと「中高年になれば出世できるから」と言われて若い頃に泥のよ うに働き、結局は泥の中でキャリアを終えてしまうことでしょう。きっと「騙された!」と感じているはずです。

実際、泣き寝入りしないで会社を訴える人もいます。2000年代に入ってから、青色LED特許の中村修二氏をはじめ、往年の名研究者、技術者が、かつて自らが在籍した企業を訴えるケースが続発しました。いずれも理由は「過去の貢献に対する適切な報酬の支払い」を求めてのモノです。

彼らは若かりし頃、様々な製品や技術の開発で会社に多大な貢献をしましたが、もちろん年功序列ですからその時点で貰えるものはたかが知れています。でもゆくゆくは役員かグループ企業の社長ポストくらいは貰えるだろうと、自らを納得させて働き続けたはず。

でも、バブル崩壊後の長期経済低迷の中で、日本企業は徐々に体力を失い、組織はスリム化され、配分するポストは年々減っていきました。貢献度の大きなベテランであっても、取締役ポストどころか中間管理職どまりでキャリアを終えざるをえなかった人が大半です。これが、元社員による訴訟の相次いだ背景ですね。要は、彼らもまた〝年功序列〞の空手形を掴まされた被害者なのです。

 

社外で通用する力を身につける

では、若い世代はどうすれば空手形を掴まされずにすむでしょうか。答えは既に述べました。会社を訴えたベテラン達のようになることです。といっても、実際に後で会社を訴えろという意味ではありません。社内限定スキルではなく、社外でも通用するスキル、専門性を身につけ、いざとなったら会社と戦えるように準備しておけということです。

会社を訴えた元研究者、技術者たちは、みな社外でも通用する高い専門性を持ち、実際に会社から離れた後に訴訟を起こしています。同じく若いころに会社に貢献しつつも、訴えずに泣き寝入りをしている人はその何百倍もいるはずですが、彼らが泣き寝入りせざるを得ないのは、彼らが会社を飛び出しては生きていけないからです。会社にいたまま、会社とケンカはできませんからね。

その会社でしか通用しない仕事、社内政治の副産物的な仕事というのは、 どこの会社にも一定数存在します。そういう仕事は適当にやっつけつつ、自分の市場価値を高める業務にリソース を集中し、いつでも転職できる人材になっておく。そうすれば、空手形を掴 まされそうになったらさっさと転職すればいいし、会社もそれだけの人材を むざむざ外に出したくないでしょうから、空手形が空でなくなる可能性もあります。この御時世、部長以上に出世している人は、会社に文句を言える地力のある人物であるケースがほとんど だというのが筆者の見方です。

 

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2014年6月20日発売!

『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』

城 繁幸 著

 

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ある日、「サラリーマンなんて言われたことやってれば楽勝だろ」が信条の山田明男に、とんでもないミッションが与えられてしまう。史上初の”終身雇用”プロ野球球団「連合ユニオンズ」への出向! 山田が見た終身雇用システムの光と影とは!?

 

――衝撃のストーリーが教えてくれる、すべての働く人のための生き残り術!

 

眼を閉じて、10年後の自分を思い浮かべてみてください。

「責任ある仕事を任され、安定した収入を得ている」そんな自分を明確にイメージすることができますか?

「さすがに失業している……ってことはないだろう」と思ったあなたは、日本の雇用環境についての見通しが少し甘いかもしれません。

人事部門には、「人材は職場環境で作られる」という格言があります。確かに、環境は人を変えます。でも、その環境を変えるのもまた人であり、その人自身の心の持ちようです。

さて、あなたは10年後に仕事で困らないために、今、どんな心構えで、何を準備すればいいのでしょうか。

この本では、「もし日本労働組合総連合会(連合)がプロ野球チームを保有して、全選手を終身雇用にしたら何が起こるのか」を細かくシミュレーションしました。そこには多くの日本人が見落としている「雇用の真実」を見つめるヒントが詰まっています。

「ありえないこと」が普通に起こる激変の「10年後」の世界で力強く生き残る方法、お伝えします。

 

<目次より>

1主体性を持って仕事をする
2嘘と本当を見分ける方法
3年功序列に期待するな
4環境が人を変える
5流動性のない組織に成長はない
6”研修”ですべてを変えるのは無理
7自分の市場価値を高める
8世の中にただ飯はない
9きれい事しか言わない人を信用してはならない
10ローンは組まないほうがいい
11若手に仕事を任せる
12過去の成功体験は捨てる
13「人に優しい会社」などない
14会社の”社会保障”には期待しない
15ブラック企業の心配をする暇があったら勉強しろ
16未来の成功体験はこれから作られる

 

四六判並製1C・248頁
定価 本体1600円+税
ISBN978-4-906790-09-8

amazon.co.jpで購入する

 

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城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

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