「中森さん! 調子よさそうですねぇ。開幕4番はいけそうですか?」
「まあ上が判断することやけど、ボクやったらいつでもいけますよ。4番でも5番でも、なんやったら1番でもやったりますよ」
「すごいやる気ですね! ところで、どうして中森さんはユニオンズを選ばれたんですか? 他にオファーはあったと聞いていますし、言っちゃあ何ですけど、ユニオンズってあんまり報酬的な魅力はなさそうな気もしますが」
ユニオンズは、選手歴の長いベテランやタイトル経験のある選手に、高めのベース給を保証している(※1)。中森クラスだと3000万にも上る額だ。その半面、出来高に連動するボーナス部分は非常に少ない。
「ボクはね、ただ野球がしたいだけなんですよ。もう40前やからとか、膝故障しとるからとか、そういう理由でスタメン外されるチームよりも、チャンスをくれる球団で働きたいんですわ」
なるほどねぇと記者たちもうなづく。多くが40歳以上のベテランで、会社からやれ 成果主義(※2)だ、早期退職募集だと、ハッパをかけられている世代でもある。
連合事務局長の平野も、中森が大のお気に入りだ。
「彼こそユニオンズの理念をもっとも理解してくれている選手ですよ。我々連合としては、ああいう古き良き労働者を大切にしていただきたい。山上監督、開幕4番はぜひ彼でお願いしますよ」
「わかりました。とりあえずリーグ前半戦は彼を主軸にチーム編成を考えましょう」
ただ、山田には現場から気になるクレームも届いていた。
※1 ベテランに高めのベース給を保証/年齢に応じて給与が上がり、ポストを与えられるというシステムは、企業業績が右肩上がりを続けているうちは機能するが、業績が傾くと若手〜中堅があれこれイチャモンをつけられて彼らの取り分から削られることになる。
※2 成果主義/若手〜中堅にあれこれイチャモンをつけて取り分を減らすためのシステム。なぜか既に配分された分については成果ゼロでもほとんど見直されることは無い。
その他の記事
|
「消防団員がうどん食べてたらクレームが来て謝罪」から見る事なかれ倫理観問題(やまもといちろう) |
|
世界でもっとも自然災害リスクが高いのに世界でもっとも幸せな国の一つと言われるバヌアツの魅力(高城剛) |
|
初めての『女の子』が生まれて(やまもといちろう) |
|
スウェーデンがキャッシュレス社会を実現した大前提としてのプライバシーレス社会(高城剛) |
|
『マッドマックス 怒りのデスロード』監督ジョージ・ミラーのもとで働いた時のこと(ロバート・ハリス) |
|
私が現役であることを思い知った夜(甲野善紀) |
|
50歳食いしん坊大酒飲みでも成功できるダイエット —— “筋肉を増やすトレーニング”と“身体を引き締めるトレーニング”の違い(本田雅一) |
|
J.K.ローリングとエマ・ワトソンの対立が示すトランスジェンダー論争の深刻さ(やまもといちろう) |
|
人生を変えるゲームの話 第1回<「負ける」とは「途中下車する」ということ>(山中教子) |
|
教育経済学が死んだ日(やまもといちろう) |
|
「50GBプラン」にして、5G時代のことを考えてみた(西田宗千佳) |
|
女の体を、脅すな<生理用ナプキンの真実>(若林理砂) |
|
「科学的」と言われることは「現在のひとつの見方」にしか過ぎない(高城剛) |
|
録音がそのままテキストに?!「Recoco」はライターの福音となるか(西田宗千佳) |
|
クリエイターとして成功したければ本を捨てろ(岩崎夏海) |











