家入一真
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家入一真×上祐史浩悩み相談(4)

貧富の差がなくなっても人は幸せにはなれない

【質問】自分ではドラッグをやめられたと思っていますが、またいつやりたくなるかわかりません。本当に何かから依存しなくなったと確信するのに、必要な根拠はありますか。

 

家入:これってありますかね。私は依存から解放された! って思うのに必要な根拠。

 

上祐:う~ん。ドラッグに依存した心理的背景があると思う。自分の価値が感じられなかったりすると、ドラッグの幻想の世界へ行ってしまう。同じように、自分の価値が感じられないから、自分がめぐりあった教祖が絶対だと信じて、外側から見て妄想の世界に入るのが「宗教」だと思う。その二つには共通点がある。どちらも逃避している幻想の世界。だから、やっぱり自分を振り返って、自己価値を柔軟な価値観で見出していくべきですね。

 

家入:なるほどな。結局今はドラッグを止められてるかもしれないけど、ドラッグに走った理由を解決しない限り、何かにまた依存してしまう可能性もあるってことですね。

 

上祐:私のかつての友達で、最初はアルコール依存、次にドラッグ依存、その次にオウムに出会ったという人がいます。彼はそれで「救われた」と言っていましたが、周りの友人は「それだけは止めてくれ」と。「ドラッグやアルコールに戻れ」と。

 

家入:むしろ(笑)

 

会場:(笑)

 

上祐:でもそれ、みんな同じだから。どっかに戻れっていうのは、結局モグラ叩きのようなもの。今の社会で自己価値が感じられない心の問題を、なんとか乗り越えていく工夫をする方が重要だと思う。

 

【質問】貧富の差をなくしたとします。そこに争いは起こらないでしょうか。

 

家入:どうなんでしょうね。争いの原因は貧富の差だけではないでしょうからね。

 

上祐:20世紀から21世紀は、貧富の差をなくそうとして共産主義が失敗しました。どんなに努力しても貧富の差がないとなれば、それは逆に不公平じゃないかという怒りが生まれると思う。今現在のアメリカの茶会運動派がそうではないでしょうか。だから、貧富の差っていうのは、みんながお金にこだわらない意識になった時に、自然に実現するものじゃないでしょうか。お金を儲けた人が、お金に拘らず、ほかの人とわかち合う社会。共産主義は、お金のない労働者が、お金のある資本家から、暴力ないし政治制度でお金を奪うというシステムだったと思います。

皆がお金にとらわれて、お金が幸福になる最大の手段だと考える社会ならば、みんなやっぱりお金を奪い合うと思いますね。貧富の差っていうのは、お金にこだわらない、成熟した社会でのみ、おのずと消え去っていく。既に20世紀に、共産主義国家が、力づくで貧富の差をなくそうとして失敗し、結果として、むしろほかの国よりも、貧富の差が開いてしまったようにも見えます。ロシアにしても、北朝鮮にしても、中国にしても貧富の差が大きい。北朝鮮なんかは民衆が飢えているとも言われる。最も不平等な国家です。こうして最初から力や制度で貧富の差をなくすのではなく、皆が貧富の差にとらわれなくなる意識の進化が大事だと私は感じます。

 

家入:そうですよね。貧富の差をなくすと、「俺らがんばってるのに、なんで金をとられなきゃいけないんだ」って思う人が生まれたりする。今の日本って、生活保護を受けざるを得ない人たちをも叩くじゃないですか。もちろん、不正受給している人もいるかもしれないですけど。

 

上祐:それは今の時代の大きな問題だと思う。アメリカに一番明確に表れている。つまりオバマ大統領らリベラル派の福祉重視の流れと、共和党の新自由主義の流れ。新自由主義の主張は、「がんばった者が報われることが平等であり自由の国アメリカ」ということ。この両者の対立は、なかなか決着がつかないと思います。みんながもう一歩進歩しないと、争いはなくならない。

 

【質問】出版関係者です。以前から雑誌の売り上げが右肩下がりです。なぜでしょうか。売れるためにはどうすればいいですか。

 

家入:えーと(笑)、そうですねー。まぁ雑誌に限らずよく言われていることですよね。ネットなどに時間を取られて、みんな本を読まなくなっている。活字離れが起きているって。

 

上祐:そうですね。ネット改革によって、出版不況が起きた。こういったときは、自分をスリムにして、経費を落として、生き残る方法がいいんじゃないですかね。

 

家入:本当その通りですね、僕もそう思います。

 

上祐:人間の、地球の摂理なんだと思う。恐竜が滅びた理由は、大きかったから。生き残るのは、大きくて強いものではなくて、変化に適応できるものだっていうのは原則ですから。生命でも企業でも同じ。

 

家入:上祐さん、経営コンサルタントできそうですね。

 

会場:(笑)

 

家入:あとはね、今は昔みたいに「この雑誌読んでおけばみんなの話についていける」っていう時代じゃないからね。国民みんなが知っている松田聖子みたいなアイドルも出づらい時代になっている。価値観がすごい多様化してしいるから、特定のジャンルで雑誌を出しても、それぞれのパイが小さすぎる。

アメリカだと人口が多いから、例えば「左利き専用の雑誌」なんかでもある程度パイが大きくて儲かるだろうけど、日本だと特定のジャンルに特化してしまうと、それぞれのパイに人がいなくなってしまう。雑誌なんか特にね。だから、生き残るためにはスリムになって耐える。

 

上祐:大きな一つのパイじゃなくて、多様化してた小さなパイになるなら、スリムにならないと対応できない。

 

家入:電子出版もありますし、誰でも出版できてしまう時代になってきたってことですよね。昔は本を出すのはハードル高かったんですけどね。

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家入一真
1978年生まれ。起業家/投資家/クリエイター。悪ふざけをしながら、リアル・ネットを問わず、カフェやWEBサービスや会社など、遊び場を作りまくっている。JASDAQ最年少上場社長。40社程の若手ITベンチャーにも投資している。解放集団Liverty代表、JASDAQ上場企業paperboy&co.創業者、カフェ運営企業partycompany Inc.代表取締役、ベンチャー投資企業partyfactory Inc.代表取締役、クラウドファンディングCAMPFIRE運営企業ハイパーインターネッツ代表取締役。個人名義でも多数のウェブサービスの立ち上げを行うクリエイターでもある。

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