岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海のメールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」より

少子化問題をめぐる日本社会の「ねじれ」

※岩崎夏海のメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」より

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最近、またぞろ少子化がネットで話題である。

もとははてなの増田で「保育園落ちた日本死ね!!!」というエントリーがあって、それにいろんな人が反応した。

「保育園落ちた日本死ね!!!」
http://anond.hatelabo.jp/20160215171759

「保育園落ちた日本死ね!!!」って言われたけど、むしろ東京都は保育園をつくるべきではない理由
http://otokitashun.com/blog/daily/10445/

「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由
http://www.komazaki.net/activity/2016/02/004774.html

政治が子育て層を簡単に無視できる、投票率以外の大きな理由
http://www.komazaki.net/activity/2016/02/004775.html

 

「少子化問題」にはそもそも
負のスパイラルがある

この問題が根深いのは、「少子化」というのが構造的な問題ということだ。どう構造的かというと、少子化が進むと子育てする人が少なくなる。そうなると、民主主義の世の中なので子育てする人が有利な政策は多数決で否決され通りにくくなる。そうして世の中はますます子育てしにくくなる。そうなるとまた子育てする人が減り――という悪循環に陥っているのだ。負のスパイラルが止まらない。

また、もう一つの根深い構造もある。それは、今の時代に子育てする人は裕福な人が多いということだ。彼らは保育をお金で解決できる。だから、そういう人に対してお金がないという理由で子供を産めない人は嫉妬する。そういう嫉妬層は多数派だから民主主義でますます子育てに不利な環境が加速する。そうしてますます少子化になる。

さらに、お金以外の理由で結婚できなかったり子供を産めなかったりする人たちも、子供を産んでいる人たちに嫉妬する。婚活女子などはほとんどが子育てしているカップルに激烈な憎悪を抱く。そういう人たちも多数派だから、なおさら少子化が進む。

そういう幾重にも構造化された負のスパイラルがあって、この問題はなかなか解決しないのだ。

 

少子化が進むと経済は縮小していく、しかし……

ところで、なぜ少子化が問題視されているかというと、一つには経済が縮小していくからである。

日本の国内需要が落ち込み景気が悪くなって消費も落ち込む。それがまた景気を悪くしてデフレスパイラルに陥り失業者やブラック企業などの社会問題を生む。そうして社会が暗く閉塞した感じになる。

ただ、少子化は実は目立ちにくいが恩恵もないわけではなくて、例えば物の値段が下がるということは全ての消費者にとってありがたいことだし、人口が減ればそれだけ住みやすくなるわけだから、居心地は良くなっている。学校なども昔は教室に50人も詰め込んで授業をしていたのが今は30人くらいのゆとりある状態で授業ができているわけだから快適さはむしろぐっと増している。

そういうふうに少子化にはいい面もあって、一概にはこれを悪くいうことはできないが、しかしまた別の大きな問題もあって、それはこれ以上進むと日本の人口は加速度的に少なくなり、それはグローバル社会において日本の存在価値をますます減じさせ、経済の加速度的な冷え込みを招くということだ。それが引いては日本語や日本文化の衰退を招くということにもなり、日本語や日本文化を守りたいという向きにはなかなか心落ち着かない事態になってしまうのである。

 

衰退が避けられない今
「未来予測スキル」が重要

それでいうと、自民党やそれを支持するネトウヨなどには少子化に対するアンビバレントな感情が見受けられる。

彼らは、日本という国体や日本語や日本文化は守っていきたいと考えているけれども、独身で婚活中だったりする場合子持ちの夫婦が憎くて仕方なかったりするから、やっぱり社会が血税を使って子育て支援をするというのはなかなか承服しがたいところがある。一方、老人層も自分たちに有利な政策をしてほしいという願いはありつつも、自分の子供や孫が不利になるのは申し訳ないから、どっちにつけばいいのか難しく心が引き裂かれるということがある。

そういうねじれがどのように収斂していくか予測が難しいところがあるのだが、日本人はおそらくそのねじれに対して結論を決めかね、その間に状況はどんどん進行して、少子化はますます広がるのではないだろうか。おそらく今後20年くらいはこのまま進行していく。だから日本経済や日本語、日本文化の縮小は避けられないのではないだろうか。

そういう中で生きていくにはまずはやっぱり日本や日本語に頼らない生き方を模索し構築していくということが重要と思う。日本や日本語はこれからますます苦しくなるので、早いうちから脱出を図るというのが優位性を築く一つの鍵になるのではないだろうか。

脱出方法はいろいろあるが、やっぱりなんといっても代替不可能性が高いスキルを身につけるのが有効だ。どういうスキルを代替不可能かというと、例えば「未来予測スキル」というのはどんな分野においても重要になるのではないかと予測する。

というのも、今はどの業界も混迷していて、一寸先は闇というか変化が激しいから、それについていくだけでも大変だ。

そこで未来予測がある程度できれば、その大変さはかなり軽減できるので、それへの需要がこれまで以上に高まることが予想されるからである。

 

岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」

35『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。

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岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

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