例えば「人間文化向上のため」という目的で卓球をやる
故・ 荻村伊智朗さん(※)は、「人間文化向上のために卓球をやる」とおっしゃっていました。当時を知らない人が聞くと「何を大げさな」と思われるかもしれません。あ るいは「そんなのは建前で、荻村さんだって本音を言えば、勝ち負けがすべてだったでしょう」という方もおられるかもしれません。
でも、少な くとも私は、荻村さんも、その周りでその思いに共感していた人も、みんな本気でした。もちろん、荻村さんは世界選手権でたくさんの成績を残した方ですか ら、当然勝ち負けを追い求めていた側面はあったと思います。でも、それはあくまで「目標」であって、「目的」ではなかった。
荻村さんは本気で、「人間文化向上」を目的に、卓球をされていた。だからこそ、あれだけのプレーができたし、結果も残せたのだと思います。
いまのスポーツ界を見渡しても、スポーツで成果を上げながらも、見ている人に「素敵だな」というさわやかな感動を与えてくれる人は、単なる「目標」を越えた「目的」を、自分の中でしっかりと持っているように思うんです。
例えば近年では、フィギュアスケートの荒川静香さんや高橋大輔さん、陸上競技の為末大さんといった方々に、私はそういう「高い目的(志)」を感じるんです。
※世界卓球選手権シングルス優勝2回(1954年、1956年)、世界卓球選手権ダブルス優勝2回(1956年、1959年)などの成績を残した、日本男子卓球史上に残る名選手。。第3代国際卓球連盟会長。
窮地において「目的」に出会う
私にとってのスポーツすることの「目的」は、運動の美しさ、その感動を求めていくことでした。その過程で、全日本や、世界選手権で結果を残すことができました。全日本選手権や世界選手権で勝つことは目標ではあったけれど、それは同時に、目的を追求するプロセスでもあったんです。
「目的」というのは、「自分の中にある動機」のことです。どんな人でも本当は、心の奥底に「動機」を持っていると私は考えています。
しかし、「卓球とはこういうものだ」「スポーツというのは こういうものだ」という固定観念が、その動機を見えにくくしてしまう。その結果、スポーツすることから「目的」が失われ、試合の結果な ど、目標だけが独り歩きしてしまう。そういうことが起きているんじゃないかと思います。
でも、そうやって目的を見失ってしまった人でも、何かをきっかけに、自分本来の目的にハッと気づく瞬間が、必ずやってきます。自分で考えて気づく人もいると思いますが、それはしばしば、選手生活、あるいは人生において、窮地に陥ったときです。
卓球をやめるか続けるか、あるいは身近な人の死といった大きな出来事に直面すると、自然に、それまで自分が囚われてきた固定観念が打ち払われます。その結果、自分が本当にやりたいこと――「目的」を突きつけられるんです。
<次回に続く>
<関連記事>
(1)上達し続ける人だけがもつ「謙虚さ」
(2)「目標」から「目的」へ
(3)プレッシャーの受け止め方
(4)視野を広げる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[caption id="attachment_2776" align="alignleft" width="163"] DVD 軸・リズム・姿勢で必ず上達する 究極の卓球理論ARP[/caption]
2012年12月11日発売!
壁を越えたいすべての人に贈る
究極の卓球理論DVD
[DVD] 軸・リズム・姿勢で必ず上達する 究極の卓球理論ARP(アープ)
世界のトップ選手たちはなぜあれほど速く、激しいラリーの中でもバランスの取れた、美しい姿勢を崩さずにプレーを続けられるのか。全日本選手権を2度制し、世界選手権団体優勝に導いた名選手・山中教子がまとめた卓球理論=ARP(アープ)理論は、その秘密を軸・リズム・姿勢の三要素でひもとき、誰でも学べる形にまとめている。初心者からトップランカーまで、卓球に取り組むすべてのプレーヤー必携の究極の卓球理論!!
特設販売サイトはこちら!
http://arp.yakan-hiko.com/

その他の記事
![]() |
「脳ログ」で見えてきたフィットネスとメディカルの交差点(高城剛) |
![]() |
中国発「ビリビリ動画」の米NASDAQ上場と、日本の「ニコニコ動画」の終わりっぷり問題(やまもといちろう) |
![]() |
『「赤毛のアン」で英語づけ』(4) 大切な人への手紙は〝語感〟にこだわろう(茂木健一郎) |
![]() |
ICT系ベンチャー「マフィア」と相克(やまもといちろう) |
![]() |
なつのロケット団とISTは、リアル下町ロケットなのか(川端裕人) |
![]() |
大きく歴史が動くのは「ちょっとした冗談のようなこと」から(高城剛) |
![]() |
急成長を遂げる「暗闇バイクエクササイズ」仕掛け人は入社3年目!?–「社員満足度経営」こそが最強のソリューションである!!(鷲見貴彦) |
![]() |
グローバリゼーション時代のレンズ日独同盟(高城剛) |
![]() |
『我が逃走』は日本版ハードシングス?(家入一真) |
![]() |
もう少し、国内事業者を平等に or 利する法制はできないのだろうか(やまもといちろう) |
![]() |
年末企画:2019年度の「私的なベストガジェット」(高城剛) |
![]() |
格安スマホは叩かれるべきか? サービス内容と適正価格を巡る攻防(やまもといちろう) |
![]() |
孫正義さん、周りに人がいなくなって衰えたなあと思う件(やまもといちろう) |
![]() |
「キャラを作る」のって悪いことですか?(名越康文) |
![]() |
週刊金融日記 第283号 <ショート戦略を理解する、ダイモンCEOの発言でビットコイン暴落他>(藤沢数希) |