その2 「老化」を受け入れる
その上で。年をとるとだな……老化ってのが来るんだな。これは厄介。あちこち 調子が悪くなるけど、これは医者に行っても治らないのよ。最近の人は栄養状態もいいので、70歳以上の方を「老化現象ですね」と言ってもイイと判断する指標としています。
60くらいだとまだ老化じゃなくて生活習慣病の域だったりするんだよね。生活習慣病の場合は、ある程度は運動したり食事内容を変えたりすると治ったりします。
老化は治らない。これを受け入れるのは結構たいへんなことです。いま、ウチで見ている80代の女性は、自分が年寄りだと考えておらず、地域で行う催事や体操教室に行ったらどうですか? と薦めると、「ああいうところは年寄りばかりだ から」と言います(笑)。
こうなると、かなりツマンナイ日常を過ごすことになっちゃいます。病院へばかり行っていて、自分の健康のことだけに意識を集中してしまってね。健康のために人生を殺してしまっているような状態になってしまいます。これを、中村仁一医師は問題としているわけです。「老化を受け入れろ」と主張しているのですよ。
けどね。中村仁一さん自身は、実際はそんなにきっぱりと老化を受け入れられていているわけじゃないんだな……と読めるところがいくつもあります。
この方、お父様を目の前で心筋梗塞で亡くされているのです、高校二年の時に。亡くなる少し前から心筋梗塞の発作がなんども出ていたのに、医者へ行かずに亡くなっていった事が書き記されています。また、「家族の前ではできるだけ痛いの、かゆいのしんどいのはいわない、ため息を付いたり眉を曇らせるようなことも控えて、普通にふるまう、唸るのはひとりきりの時に、と心がける……」とも書かれています。
ああ、この方も死ぬのは怖いんだな、と、そのあたりを読んでわたしは思いました。怖いからこういう本、書いたんだなぁと。この本は恐怖に打ち勝つために書 かれた物なんじゃなかろうか……。医療介入をしなければ、ポックリと死ねる、医療介入をしなければ、痛みもなく枯れるように死ねる、と、言い聞かせているように思えてならないのです。

その他の記事
![]() |
老舗江戸前寿司店の流儀(高城剛) |
![]() |
『君の名は。』『PPAP』…ヒットはどのようにして生まれるか(岩崎夏海) |
![]() |
古い日本を感じる夏のホーリーウィークを満喫する(高城剛) |
![]() |
週に一度ぐらいはスマートフォンを持たず街に出かけてみよう(名越康文) |
![]() |
メルカリなどCtoCプラットフォームを揺るがす「隠れB」問題(やまもといちろう) |
![]() |
欠落していない人生など少しも楽しくない(高城剛) |
![]() |
アクティブ・ノイズキャンセル・ヘッドフォンと聴力の関係(高城剛) |
![]() |
金は全人類を発狂させたすさまじい発明だった(内田樹&平川克美) |
![]() |
21世紀、都市の未来は「空港力」にかかっている(高城剛) |
![]() |
私たちの千代田区長・石川雅己さんが楽しすぎて(やまもといちろう) |
![]() |
猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉 第6回:椅子に固定されない「身体の知性」とは何か(宇野常寛) |
![]() |
Googleの退職エントリーラッシュに見る、多国籍企業のフリーライド感(やまもといちろう) |
![]() |
「一人負け」韓国を叩き過ぎてはいけない(やまもといちろう) |
![]() |
誰かのために献身的になる、ということ(高城剛) |
![]() |
岸田文雄政権の解散風問題と見極め(やまもといちろう) |