甲野善紀
@shouseikan

対話・狭霧の彼方に--甲野善紀×田口慎也往復書簡集(1)

「科学」と「宗教」、あるいは信仰における「公」と「私」

 

「信仰」が保障される社会へ

極端な話、現代科学の最先端の知見と真っ向から抵触するような考えであっても、狂信的と言うことではなく、「本当に深い」信仰を持った人々は、「科学的にはどうであれ、我々は、このような立場を取ります」と言うべきなのではないか、と私は思うのです。

そして、我々の社会は、それを許容するべきであると思うのです。本当に「多様性」を持ち、全ての人間が自らの信念のもとに生きていくことが出来る社会を実現させるとは、こうした「信仰を持った人々」の「(容易には他者から理解されないかもしれない)信仰」をも保証する社会であるはずではないでしょうか。

繰り返しになりますが、原理主義、狂信、カルトは避けねばなりません。しかし、科学という「現代における絶対」に対して、宗教(者)は、安易に妥協してもいいのでしょうか?

もちろん、現段階の私に明確な答えがあるわけではありません。しかし、それでも信仰者は「覚悟」を持って言うべきではないかと思うのです。「科学的であろうとなかろうと、我々の宗派はこうした立場を取ります。こういう『生き方』を選択します」と。

いろいろ書いてしまいましたが、こうした宗教・信仰における「公と私」、そして「科学と宗教」の関係性については、まだまだ考え始めたばかりで、上手くまとめあげるところまでできていません。

今回私が書いた内容ではとても扱うことが出来なかったような複雑な問題、重要な問題も数多く存在します。「信仰における公と私」。この問題についても、私は目を逸らさず、自分に「嘘」をつかずに、自分にとって「切実な」問題から逃げずに、目を逸らさずに、「自分の道」を歩んでいきたいと思います。今後自分の頭で考え続けていきたいと考えています。

かなり長い文章となってしまい、申し訳ありませんでした。ですが、甲野先生や森田さんのお話を伺うなかで、自分が本当に追及して考えていきたいこと、自分が本当に関心のあることが、少しずつ、明確になってまいりました。本当にありがとうございます。このようなご縁をいただけたことに感謝いたします。

田口慎也

 

※この記事は甲野善紀メールマガジン「風の先、風の跡――ある武術研究者の日々の気づき」 2011年11月7日,11月21日 Vol.015-016 に掲載された記事を編集・再録したものです。

 

 

<甲野善紀氏の新作DVD『甲野善紀 技と術理2014 内観からの展開』好評発売中!>

kono_jacket-compressor

一つの動きに、二つの自分がいる。
技のすべてに内観が伴って来た……!!
武術研究者・甲野善紀の
新たな技と術理の世界!!


武術研究家・甲野善紀の最新の技と術理を追う人気シリーズ「甲野善紀 技と術理」の最新DVD『甲野善紀 技と術理2014――内観からの展開』好評発売中! テーマソングは須藤元気氏率いるWORLDORDER「PERMANENT REVOLUTION」!

特設サイト

 

甲野善紀氏のメールマガジン「風の先、風の跡~ある武術研究者の日々の気づき」

8自分が体験しているかのような動画とともに、驚きの身体技法を甲野氏が解説。日記や質問コーナーも。

【 料金(税込) 】 540円 / 月 <初回購読時、1ヶ月間無料!!> 【 発行周期 】 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)

ご購読はこちら

 

1 2 3 4
甲野善紀
こうの・よしのり 1949年東京生まれ。武術研究家。武術を通じて「人間にとっての自然」を探求しようと、78年に松聲館道場を起こし、技と術理を研究。99年頃からは武術に限らず、さまざまなスポーツへの応用に成果を得る。介護や楽器演奏、教育などの分野からの関心も高い。著書『剣の精神誌』『古武術からの発想』、共著『身体から革命を起こす』など多数。

その他の記事

「他人に支配されない人生」のために必要なこと(名越康文)
実態は魑魅魍魎、美味しいと正しいの間に揺れる飲食業界(高城剛)
仮想通貨に関する概ねの方針が出揃いそう… だけど、これでいいんだろうか問題(やまもといちろう)
ソーシャルビジネスが世界を変える――ムハマド・ユヌスが提唱する「利他的な」経済の仕組み(津田大介)
思い込みと感情で政治は動く(やまもといちろう)
コデラ的出国前の儀式(小寺信良)
歴史に見られる不思議なサイクル(高城剛)
AIと再生医療(高城剛)
観光バブル真っ直中の石垣島から(高城剛)
『外資系金融の終わり』著者インタビュー(藤沢数希)
“スクランブル化”だけで本当の意味で「NHKから国民を守る」ことはできるのか?(本田雅一)
アカデミー賞騒ぎを振り返って〜往年の名優を巻き込んだ「手違い」(ロバート・ハリス)
「生涯未婚」の風潮は変わるか? 20代の行動変化を読む(やまもといちろう)
孤立鮮明の北朝鮮、どうにもならず製薬会社にハッキングして見抜かれるの巻(やまもといちろう)
結婚はむしろコスパサイコー!? ほとんどの若者が理解していない賢い老後の備え方(岩崎夏海)
甲野善紀のメールマガジン
「風の先、風の跡~ある武術研究者の日々の気づき」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回発行(第3月曜日配信予定)

ページのトップへ