小寺信良のメルマガ『金曜ランチボックス』より

就活生へあまりアテにならないアドバイスをしてみる

学生達の就活が大変なことになってるらしい。リクルートが今年5月に発表した大卒求人倍率では、2008、2009年の2.14倍をピークに減少を続け、2012年卒業予定者では1.23倍、来年はちょっとだけ上昇するも、ほぼ横ばいの1.27倍という低水準だという。[*1]まあ1を切らないだけマシと言えるかもしれないが、希望する職種や会社に潜り込むのは相当難しそうだ。

特に昨年の震災に続き、中韓との摩擦でアジア圏での事業に不透明感が出てきた今年、内々定がパーになった人も少なくあるまいと思う。新卒でどこかに入社できなかった場合、その子たちはニートとして社会に溢れ出すことになるのだろうか。

 

夢や目標を持ちづらい時代

そもそも職業として何をするのか、何になるのかという夢や目標が持ちづらい世の中だ。広告代理店、旅行代理店が花形企業だったのも、景気がいい時の話である。理系・技術系の人は一流メーカーに就職したいかもしれないが、今は不採算部門の切り離しに精一杯で、工場ですら新卒の大量雇用などあり得ない。強いて挙げれば、通信系ではグリー、DeNAあたりはうまくいっているだろう。しかしどうも先行きに不安が残る。双方、泥沼の訴訟合戦を続けているというのも、イメージを悪くしている原因だろう。

うまいことやれる学生は、在学中にベンチャーを起こして卒業後はそこに収まるというのがゴールデンコースである。アメリカの名だたるネット企業は、みんなそうやって立ち上がってきた。日本でなかなかそれができないのは、学生諸君に責任があるとばかりは言い切れない。ベンチャーに金を出す投資家がいないことも大きな問題だ。そもそも学生には、どうやって投資家に接触すればいいのかもわからないだろう。筆者も正直わからない。アイデアと事業投資をマッチングする仕組みが日本にはないのだろう。

それでも何がやりたいかわかっている人はまだ幸せなほうだ。20歳そこそこで自分の才能を見いだし、これからの道を自分で開拓できる人などそう多くはない。「そもそも社会に出たことがないのに、どーせいっちゅーの」とやり場のない不安や憤りを抱えている学生も少なくないだろう。

そういう不満からなのかどうなのか、学生たちが昨年11月、「就活ぶっこわせデモ」なるものを新宿で開催したそうである。[*2] 今年もやるのだろうか。大学3年の時点ですでに内々定をもらわないとお先真っ暗、企業面接100社受けても通らない、何が何でも新卒じゃないと通らないのはシステムとしておかしいという主張には、まあ納得できるものがある。ただ多くの人が冷ややかにこれを見ていたのは、就活に失敗したからデモをやるというふうに見られたからだろう。

もちろん、状況がひっ迫している当人たちがデモをするのはまことに当たり前だし正しいのだが、時期が悪かった。今そんなことを主張されても、もう今年はそれで動き出しちゃったんだから、採用側としても方針を変えるわけにはいかない。さらに大学1、2年生はまだ全然そのあたりの危機感を共有することはできない。「自分はうまくやれる」と、みんな思っているからである。

1 2 3 4

その他の記事

働かないのか? 働けないのか? 城繁幸×西田亮介特別対談(後編)(城繁幸)
ZOZOSUITのビジネススーツ仕上がりが予想以上に残念だった理由を考える(本田雅一)
ひとりぼっちの時間(ソロタイム)のススメ(名越康文)
殺人事件の容疑者になってしまった時に聴きたいジャズアルバム(福島剛)
アーミテージ報告書の件で「kwsk」とのメールを多数戴いたので(やまもといちろう)
暗黙の村のルールで成功した地域ブランド「銀座」(高城剛)
ネットも電気もない東アフリカのマダガスカルで享受する「圏外力」の楽しみ(高城剛)
世界は本当に美しいのだろうか 〜 小林晋平×福岡要対談から(甲野善紀)
気候変動が影響を及ぼす人間の欲望のサイクル(高城剛)
悲しみの三波春夫(平川克美)
キャリア女性のみなさん、その結婚、本当に大丈夫?(藤沢数希)
あまり語られることのないエストニアが電子政府に向かわざるをえない本当の理由(高城剛)
「近頃の新入社員は主体性に欠ける」と感じる本当の理由(名越康文)
ガースーVS百合子、非常事態宣言を巡る争い(やまもといちろう)
週刊金融日記 第285号<暗号通貨トレーディング失敗記録もぜんぶメルマガ読者にお見せします、株式市場は日米の政策期待に期待他>(藤沢数希)

ページのトップへ