名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

高いエステはなぜ痛いのか――刺激と退屈の心理学

心は刺激依存症

なぜ心は刺激を求めるのか。それはおそらく、刺激のまったくない状態が、心に「死」を連想させるからではないかと思います。

僕はいろんなところで瞑想をお勧めしています。それを聞いて「ちょっとやってみようかな」と思って取り組んでみる人はけっこういますが、ほとんどの人が必ずといっていいほど続かない。そこで「なぜ止めてしまったのか」と聞いてみると、瞑想がまったくうまくいかないから止めたというよりも、むしろ瞑想が少し上手にできだしてから、止めてしまっている人が多いんです。

不思議ですよね。

でも、これは「心が刺激を求める」という仮説に立つと、説明できるんです。瞑想がうまくいくと、心から刺激が減ります。そうすると心は「これはまずい」と大慌てで瞑想をやめさせようと、あの手この手で邪魔をしてくる。だいたい、こういうパターンで、瞑想を止めてしまうんだと思うんです。

それくらい、僕らの心は、刺激を渇望している。刺激がなくなることに対する恐怖心は、かなり本能的なもので、とても強い。だからこそ僕らは、無感覚の恐怖よりは悪い刺激で苦しむことを選ぶのではないか。

卑近な例でいえば、ネットの書き込みで悪口を書かれているのを1回見ると、もっと見たくなるということもありますね(笑)。これ、完全に「悪い刺激」ってわかりきってるじゃないですか。それでもなお、僕らは刺激を求める。もっと見たくなる。見て傷つく。

つまり僕らの心は「もっと怒りたい」「もっと傷つきたい」と思っている。一言で言えば「刺激依存症」なんですね。

1 2 3 4 5
名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:現:大阪精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『「鬼滅の刃」が教えてくれた 傷ついたまま生きるためのヒント』(宝島社)、『SOLOTIME~ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)『【新版】自分を支える心の技法』(小学館新書)『驚く力』(夜間飛行)ほか多数。 「THE BIRDIC BAND」として音楽活動にも精力的に活動中。YouTubeチャンネル「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。チャンネル登録12万人。https://www.youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk 夜間飛行より、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

「罪に問えない」インサイダー取引が横行する仮想通貨界隈で問われる投資家保護の在り方(やまもといちろう)
この星に生きるすべての人が正解のない世界を彷徨う時代の到来(高城剛)
終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか(やまもといちろう)
スターウォーズとレンズとウクライナ紛争(高城剛)
私たちの千代田区長・石川雅己さんが楽しすぎて(やまもといちろう)
高2だった僕はその文章に感情を強く揺さぶられた〜石牟礼道子さんの「ゆき女聞き書き」(川端裕人)
「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか(津田大介)
本当の知性を育む「問いへの感度を高める読書」(岩崎夏海)
NYの博物館で出会った「カミカゼ・エクスペリエンス」(川端裕人)
部屋は「あなた」である――掃除をするか、旅に出るか(名越康文)
中国国家主席・習近平さん国賓来日を巡り、アメリカから猛烈なプレッシャーを受けるの巻(やまもといちろう)
週刊金融日記 第272号<高級住宅地は子育てにまったく向かないという話 他>(藤沢数希)
東大生でもわかる「整形が一般的にならない理由」(岩崎夏海)
情報を伝えたいなら、その伝え方にこだわろう(本田雅一)
「控えめに言って、グダグダ」9月政局と総裁選(やまもといちろう)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
【DVD】軸・リズム・姿勢で必ず上達する究極の卓球理論ARP
「今のままで上達できますか?」元世界選手権者が教える、新しい卓球理論!

ページのトップへ