ふるまいよしこ
@furumai_yoshiko

ふるまいよしこメルマガ『§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな』より

少林寺、そのセックス、カネ、スキャンダル

ふるまいよしこメルマガ「中国万華鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな §」vol.100(2015年8月1日発行)より
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いつものように話題に事欠かない中国だが、ここのところ日本人にもよく知られている少林寺を舞台に騒ぎが持ち上がっている。

キーワードはずばり、「少林寺とカネ、そしてセックス」である。

きっかけは7月25日、ネットに流れた書き込みだった。タイトルはズバリ、「少林寺の釈永信・方丈は大トラ、誰が監督するのか」。ここでいわれる「方丈」というのは住職という意味、「トラ」とは、習近平・共産党総書記がその就任時に「トラもハエも捕まえる(潰す)」と形容した汚職容疑者を指す。つまり、「少林寺のトップ住職、釈永信は汚職している」と名指しによる告発である。

告発の内容は、釈永信方丈は、もともとは少林寺の廟に属する資産を自分の手の内に納め、また多くの女性たちと性的関係を持ち、私生児までいるというもの。書き込みの主は同時にいくつかのメディアに直接、同様の内容をメールに送りつけていたという。

 

事情聴取メモ付きの告発に、メディアやネットが騒然

実は、釈方丈に対する同様の告発は今回が初めてではない。なので、話題としてはそれほど新しいものではなく、2013年初めにも今回とほぼ同様の書き込みがあり、一時大きな注目を浴びた。しかし、書き込みの主も、そしてその内容の真偽も明らかにされないままにたち消えになった。

だが、今回は違った。まず、メディアに送られた告発メールには、釈永信方丈のものとされる、2つの身分証明書のコピーやその子供の戸籍証明、さらには2013年の告発で当局の事情聴取を受けた方丈、そして方丈と肉体関係を結んだとする女性の証言メモのコピーなど、2回に分けてそれぞれ14ページの「証拠」資料まで添付していたのである。さらにそこには実際に聴取に立ち会った捜査員の名前もあり、メディアの取材でその一部は、現時点も少林寺直近の河南省鄭州市の公安局に実在する捜査員であることが明らかになった。

それらの資料によると、方丈は劉と名乗る女性と長年肉体関係にあり、この女性は一度中絶までしたという。女性と方丈は最初、女性が少林寺に献金をする代わりに彼女が暮らす深圳市に少林寺の連絡窓口を作ることを持ちかけられる形で知り合った。この求めに方丈は連絡窓口ではなく、仏教を広めるための拠点作りを示唆したという。その後、方丈は仏像の開眼供養を引き受けることを約束したが、実際に先延ばしにされたままだと、女性は不平を述べたようだ。

また、方丈の実家には方丈の妻と見られる女性が方丈の母親と暮らしており、そこで方丈との間に生まれた、2人の娘を育てているという。その2人の戸籍証明も証拠として添付されていた。

日本と違い、中国の仏教は妻帯を認めていない。なので、出家した僧が女性と関係を持ったり、妻を持ったりというのはもってのほかである。というか、世界的に見て、妻帯したり、肉食したりする日本の僧侶のほうが特殊なのであるが。

だが、得られた情報を元に中国メディア関係者が釈方丈の家族に確認したところ、「妻」とされる女性は釈の母方のいとこだという。だが、メディアはその後、その彼女と同じ名前の尼僧がかつて少林寺にいたことを突き止めており、釈方丈と彼女がやはり親しい関係に合ったのではないかと伝えている。

さらに告発主は7月29日、今度は少林寺がこれまでに4台の輸入高級車を含む車両15台を所有しているとする資料をメディアに送りつけた。またそのうち10台には違法履歴があるが未処理のままになっているという。だが、これらの車両が釈方丈個人のものだとする証拠はなかった。

こうして次々と告発が続く中、今度は少林寺側が30人の僧侶の連名で、それらの告発をした「釈正義」と名乗る人物は、山東出身の元同寺の僧侶、釈延魯であるという声明が発表された。声明によると、もともと釈永信方丈付きだった釈延魯氏は意見の違いから僧籍を離れたが、そのことを恨んでのことだという。メディアが元・釈延魯氏の所在を突き止めたが、同氏は「自分ではない。ただ、この“釈正義”氏の勇気には敬服する」とコメントしている。

この事件について、中国仏教協会も公式声明を発表し、「これは少林寺のみならず、中国仏教のイメージと名誉に関わる出来事であり、広範な仏教徒たちが高く注目している。当協会はすでに関連担当局と地方政府に、できるだけ早く真相を解明し、事実を突き止め、正しい理解を促したい」と述べている。これは同協会による、初めての釈方丈スキャンダルに対する公式声明である。

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ふるまいよしこ
フリーランスライター●北九州大学(現北九州市立大学)外国語学部中国学科卒。1987年から香港中文大学で広東語を学び、雑誌編集者を経て独立●現在は北京を中心に、主に文化、芸術、庶民生活、日常のニュース、インターネット事情などから、日本メディアが伝えない中国社会事情をリポート、解説●東京新聞の土曜日朝刊「本音のコラム」担当●「Newsweek Japan ウェブ」にコラム「中国 風見鶏便り」を連載●著書『香港玉手箱』(石風社)、『中国新声代』(集広舎)●共著『艾未未読本』(集広舎)、『中国超入門』(阪急コミュニケーションズ)

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