小田嶋隆の「グラフィカルトーク」+平川克美の「グラフィカルトーク解題」第4回

「モザイク」は誰を守っているのか−−向こう側からは見えている

※本稿は内田樹&平川克美メールマガジン「大人の条件」2014年4月19日Vol.082<小田嶋隆の「グラフィカルトーク」+平川克美の「グラフィカルトーク解題」第4回:モザイクは誰のためのものか>を再構成したものです。

 

——この番組では人気コラムニスト小田嶋隆のグラフィカルトークをお送りいたします。グラフィカルトークとは毎回小田嶋先生が選んだ、絵、雑誌の切り抜き、写真などのグラフィックを題材に、いまの社会を縦から横からそして斜めから切り、論じるといったものです。今回はいったいどんな写真なのか。小田嶋先生よろしくお願いいたします。

 

ローソンの前で

——第4回の写真はこちらです。

 

CIMG4318b-compressor

 

ローソンの前に人がたむろしています。みんな若いですね。高校生か、あるいは仕事をしていない人に見えます。ちょっと悪そうな感じ。たばこを吸っているということは、高校生ではないのかもしれません。

小田嶋:まず、よくローソンってわかりましたね。ファミマとか、セブンイレブンとかだとは思わなかった?

——ブルーのコンビニってローソンしかないですよね。

小田嶋:恐れ入りました。なるほどね、この色をみただけで、ローソンとわかるわけね。それで、このたむろしている人たちだけど、服装とかで何か感じる、訴えてくるものはないですか?

——みんな暖かい格好をしていますね。ダウンジャケットにファーがついているようなものを着て、前髪が立っていて、やっぱり不良っぽい感じですよね。いわゆる「便所座り」みたいな、だらしない感じで座っています。

小田嶋:偏差値だといくつくらいだと思いました?

——30とか40とか……まあ、インテリな感じはしないですよね。

小田嶋:これは 1週間くらい前、浅草で友達とお茶を飲むということで、例によって自転車で行って、早く着きすぎたので、近所をぐるっと走っていたときに撮った写真です。とある高校が文化祭をやっていて、高校の文化祭のすぐ隣のローソンですね。

一人ひとりインタビューしたわけではないので、高校生かどうかはわかりません。でも、もし高校生だったら、たばこを吸ってるのはマズいですよね。だから高校名は言いません。いずれにしても、けっこうナニな高校だということですね。

——ナニな高校ってどういうことですか?

小田嶋:ビーバップな高校ということです。学園祭だから、けっこう校門から出入りがあるんですけどね。出てくる子たちもそれぞれすごい雰囲気でね。いずれにしても、載せるときには目線・ぼかしは必須だと思います(編注:上の写真はモザイクをかけています)。この子達がたばこを吸っているのをインターネットにバーンと載せるのは大変なことなので。

近頃は、個人を特定できる写真をウェブに載せると一発で「こら山田、たばこなんか吸っているんじゃねえ!」という話になりますからね。仮に載せるとしても、グーグルストリートビューのように全部ぼかしを入れる必要があるでしょう。

グーグルストリートビューって、人間の顔が映っていると、必ずぼかしが入るように作られています。道玄坂のラブホ前を歩いている二人がストリートビューに映り込んでしまったらまずいことが起きちゃうかもしれないでしょう? だから自動的にぼかしを入れているんですね。車のナンバーなんかも、全部モザイクが入るようになっています。

ただ、そうやってぼかしやモザイクを入れたところで、わかるものはわかりますから、そういうのは問題になっていますね。だからこの写真も、載せるときにはよほど注意して、顔が誰だか特定できないようにして載せてあげないといけないですね。

——前途洋々たる若者の学園祭ですからね。

1 2 3

その他の記事

問題企業「DHC社」が開く、新時代のネットポリコレの憂鬱(やまもといちろう)
岸田文雄政権の解散風問題と見極め(やまもといちろう)
コデラ的恋愛論(小寺信良)
夜間飛行が卓球DVDを出すまでの一部始終(第2回)(夜間飛行編集部)
迷走する吉本興業の問題が“他人ごと”だけでは済まない理由(本田雅一)
オーバーツーリズムの功罪(高城剛)
YouTubeを始めて分かったチャンネル運営の5つのポイント(岩崎夏海)
世界はバカになっているか(石田衣良)
「心の速度を落とす」ということ(平尾剛)
世界経済の混乱をどう生き抜くか(やまもといちろう)
人間の場合、集合知はかえって馬鹿になるのかもしれない(名越康文)
「減りゆく日本人」出生数低迷と政策的手詰まり(やまもといちろう)
日本が世界に誇るべき観光資源、温泉について(高城剛)
音声入力とAIによる「執筆革命」(高城剛)
「試着はAR」の時代は来るか(西田宗千佳)

ページのトップへ