※岩崎夏海のメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」より
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最近、興味があるのは1980年代とフルシチョフだ。
80年代は、よく「バブルの時代」といわれる。なぜかというと、バブルの時代のど真ん中で、その影響があまりにも大きかったからだ。
しかし、80年代はもちろんバブルの時代というだけではなく、それ以外にもいろいろなことがあった。しかし、そんな80年代を魅力的に描いた、あるいは回顧したコンテンツというのはなかなかない。
先日、マンガ家の大井昌和さんのニコ生に出させていただいて、ちょっとそういう話になった。例外的に「アオイホノオ」は成功したが、それ以外の好例が見当たらない。それは、60年代や70年代と比べたらもちろん、90年代に比べても少ないのだ。
なぜかといえば、かつて「バブルへGO!!」という映画があって、これが大失敗したためではないだろうか。そのトラウマが大きく、「80年代を描いても当たらない」という評価が定着してしまった。
しかしぼくは、この映画は単に80年代をバブルとしてだけとらえていたから失敗したのであって、その裏にある人間の話をしっかりと描ければ、もっと切り口はいろいろあるはずという確信がある。
だから、80年代を描くためのバブル以外の切り口を探しているのだが、そのときに、まずは同時代――つまり80年代に作られたコンテンツを読んでみるのがいいのではないかと考えた。それは、同時代からの証言は、バブルをことさら重要なものとは描いていないので、バブル以外の切り口として参考になるのではないかと思ったからだ。
80年代のコンテンツはいろいろあるが、パッと頭に浮かんだのは、「コミック雑誌なんかいらない!」という映画と、柳沢きみおの描いた「妻をめとらば」というマンガだ。
「コミック雑誌なんかいらない!」は、以前このバックナンバーでも紹介した。
週末に見たい映画#51「コミック雑誌なんかいらない!」(2,076字)
内容を簡単に説明すると、内田裕也演じる芸能レポーターの主人公が、当時話題になっていた人々にインタビューに行くという内容だ。この映画が作られたのが1986年で、まさに80年代のど真ん中だ。だから、この映画を見れば80年代のことがより深く理解できるようになるだろう。
もう一つの「妻をめとらば」は、連載が1987年に始まって1990年に終わっているので、やっぱり80年代のど真ん中で描かれている。しかも、主人公の仕事がバブルの爆心地ともいえる証券業界なので、なおさら興味深い同時代証言となっている。
この「妻をめとらば」に限らず、柳沢きみおのマンガは同時代を丁寧に活写した作品が多い。「正平記」は70年代の受験戦争を生々しく描いていたし、「SEWING」は80年代のアパレル業界が瑞々しく描かれていた。
柳沢作品でユニークなのは、作品中に実在の街が出てきて、それを丁寧にスケッチしているところだ。例えば、「妻をめとらば」の第一話では、主人公が渋谷で待ち合わせをしているのだが、その後ろには当時の109が描かれている。柳沢きみおは、比較的記号的な絵を描くマンガ家なのだが、街や服といったディティールは写実的に描いている場合が多い。だから、当時の雰囲気をより一層鮮明に伝えてくれているのだ。
この「妻をめとらば」は、今Kindleで一巻と二巻を無料で読むことができる。これだけでも、80年代とは何かというのがよく分かるので、みなさんも試しに読まれてみてはいかがだろうか。
『妻をめとらば』(1) [Kindle版]
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また、もう一つ気になっているのがフルシチョフである。なぜかというと、キューバ危機でアメリカの戦争開始を止めたのはケネディだが、ソ連を止めたのがこのフルシチョフだからだ。
フルシチョフという人は、長い間スターリンの直近を務め、その独裁や大量虐殺を目の当たりにしてきた。そうした人が、核戦争の危機に際しよくそれを回避できたなと思うから、興味がわいたのだ。
人類の歴史は、近代がどん詰まりになった第一次世界大戦で一つの大きなターニングポイントを迎えた。それは、大戦の被害があまりにも大きく、戦争の概念を考え直さなければならない事態に直面したからだ。しかし、その第一次大戦の後処理が上手くいかず、結局は第二次大戦が起こった。その反省から、「もう二度と大戦を起こさない」というのが、それ以降の人類の大きなテーマとなったのだ。
その中で、最大のポイントとなったのが「キューバ危機」だから、これを知ることは、現代とは何かを考える上で避けては通れない。その主役の一人を担ったフルシチョフは、一体どういう人物だったのか? それは、もう一人の主役であるケネディに比べるとあまりにも情報が少ない。だから、それを知りたいという気持ちが、現代史を学ぶ中でむくむくと湧き上がってきたのだ。
今、とりあえずフルシチョフ関連の本を読んで勉強しようと思っているところである。
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